道草物語 第七話
陰気臭い物件とはおさらばした。3日で。たぶんタヌキにでも騙されたんだろうということにした。京都に思いを馳せすぎたのだ。
さて物件。これが決まらないと何も進まない。気づけば紅葉シーズン。そして、もう間も無く2018年も年末特番のニュースがSNSに流れてくる時期だった。そう。「カフェやりたい」から、まもなく1年が経つ。普通の人なら「もういい加減諦めようぜ」と言うだろう。僕も何度かそれを口にしたが、「うん、でも次こそ見つかると思うんだよね」と妻。忘れてはならない。妻はピーターパンだ。いつだって空を飛べる気持ちでいる彼女は、そうやすやすと心は折れないのである。
そうこうしているうちに3件目。少し家から遠いが、一軒家の素敵なおうちを紹介してもらった。「お店やりたい!」と1年言い続けてきたおかげで、周りにサポートしてくださる方が増え、「ここどう?」と物件を教えてくださったのだ。
内見した感想は、とても気持ちの良い物件だった。あぁ、おうちカフェもいいな。そう思うくらい素敵だった。広いリビング。静かな環境。ここにきたら心安らぐだろう、と思った。なんなら住みたいくらいだ。
しかし、大きな問題が。自宅からの距離である。車かバスでないと通えない距離にお店を持つのは、とっても大変なはず。珍しく妻もネガティブになっていた。
僕「どう?」
妻「空さえ飛べればな...」
いい物件に出会うのはまだ先である。
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