ある披露宴で元カノの前でショーした話。
数年前。
プロのパフォーマーになってから 人生で初めて、
ギャラをしっかり いただいているのにもかかわらず
ギャラをしっかり いただいているのにもかかわらず
「ボイコットして逃げたい」
と控室で 本気で思った出来事である。
ある日、大学時代の友人から
SNS上のメッセージアプリから
依頼がきた。
SNS上のメッセージアプリから
依頼がきた。
披露宴でのショーのご依頼である。
学生時代にたくさん交流が多かったわけでもないのに
こうして依頼をしてくれることは
本当にありがたいことである。
学生時代にたくさん交流が多かったわけでもないのに
こうして依頼をしてくれることは
本当にありがたいことである。
意気揚々と引き受け、
当日 その県へと向かう。
打ち合わせを済ませると
知った顔の友人がカメラを片手に現れた。
当日 その県へと向かう。
打ち合わせを済ませると
知った顔の友人がカメラを片手に現れた。
そういえば新郎新婦の共通の友人であった。
どうやらこの披露パーティーのカメラマンで呼ばれたそうだ。
他のゲストに比べて早くの現場入り。
受付担当などのスタッフ側のゲストとお店のスタッフのみである。
一応、ゲストへはサプライズ的なマジックショーであったため
控室にこもり、ネタの準備をする。控室は会場に近く
カーテンを除けばほぼステージも見える位置である。
ゲストがだんだんと会場へ入ってくる。
カメラマンの友人は 常にひょうひょうとした男で
その気無しにふと 衝撃的な言葉を僕に伝えた。
「そういえば今日、〇〇ちゃんくるで」
どうやらこの披露パーティーのカメラマンで呼ばれたそうだ。
他のゲストに比べて早くの現場入り。
受付担当などのスタッフ側のゲストとお店のスタッフのみである。
一応、ゲストへはサプライズ的なマジックショーであったため
控室にこもり、ネタの準備をする。控室は会場に近く
カーテンを除けばほぼステージも見える位置である。
ゲストがだんだんと会場へ入ってくる。
カメラマンの友人は 常にひょうひょうとした男で
その気無しにふと 衝撃的な言葉を僕に伝えた。
「そういえば今日、〇〇ちゃんくるで」
ネタの道具箱をひっくり返す勢いで
僕は挙動不審になった。
胸が張り裂けるかのような緊張と
なんかよくわからぬ動悸がする。
1000人規模のステージでも緊張しなかったのに
今までのどんなステージよりも緊張し始めた。
というより 逃げたかった。
その僕の様子を見て 友人は
「あ....言わなきゃよかったな。」
遅い。遅いわ。
ちょっと照れ笑いをする彼の顔を殴りたかった。
どうやら知ってると思っていたらしい。
同時にどうやら、向こうは僕が余興でショーをすることを
知らないらしい。
僕は挙動不審になった。
胸が張り裂けるかのような緊張と
なんかよくわからぬ動悸がする。
1000人規模のステージでも緊張しなかったのに
今までのどんなステージよりも緊張し始めた。
というより 逃げたかった。
その僕の様子を見て 友人は
「あ....言わなきゃよかったな。」
遅い。遅いわ。
ちょっと照れ笑いをする彼の顔を殴りたかった。
どうやら知ってると思っていたらしい。
同時にどうやら、向こうは僕が余興でショーをすることを
知らないらしい。
自分を褒めるようで恐縮だが
元来、ショーに対しては真面目である。
私情はショーマンとしては挟むべきではないと思っている。
それがどうだ。おいおい。この情緒不安定さは。
元来、ショーに対しては真面目である。
私情はショーマンとしては挟むべきではないと思っている。
それがどうだ。おいおい。この情緒不安定さは。
遡ること10年前。
僕がまだ大阪へと芸人を目指していく移り住む前の
社会人時代にお付き合いしていた子だ。
大阪に住んでからもしばらく交際はあったが
まーなんというか
ふられたのだ。
売れてない芸人時代は
随分情けなかったのだから仕方ない。
いや、今もか。
僕がまだ大阪へと芸人を目指していく移り住む前の
社会人時代にお付き合いしていた子だ。
大阪に住んでからもしばらく交際はあったが
まーなんというか
ふられたのだ。
売れてない芸人時代は
随分情けなかったのだから仕方ない。
いや、今もか。
5年以上も前のことを なんで今もそんな考えているのか
ああ みみっちい。
自分の情けなさに死にそうになりながら
自問自答を繰り返し、やたらと喉が渇く。
がぶがぶ水を飲み続けていた。
そしてショーが始まる数分前、
カーテンを覗くと
まさかの正面ど真ん中に
元カノがいた。
(当時より痩せてて綺麗になっていた。ちくしょう)
ああ みみっちい。
自分の情けなさに死にそうになりながら
自問自答を繰り返し、やたらと喉が渇く。
がぶがぶ水を飲み続けていた。
そしてショーが始まる数分前、
カーテンを覗くと
まさかの正面ど真ん中に
元カノがいた。
(当時より痩せてて綺麗になっていた。ちくしょう)
おい待て待て。
心臓が高鳴る。
おいがんばれのず。
お前はプロのショーマンだろう。
今日のメインは新郎新婦!
私情をはさむなハサムナカムサハムニダ。
心臓が高鳴る。
おいがんばれのず。
お前はプロのショーマンだろう。
今日のメインは新郎新婦!
私情をはさむなハサムナカムサハムニダ。
景色がゆらゆらと動き
一瞬でこの場から衣装のまま
逃げたいと思った。
あの日のように
近鉄アーバンライナーに乗って
泣きながら大阪へ逃げ帰りたかった。
だがもうそれはできない。
いくぞいくぞいくぞ!
こんなに自分を鼓舞するのは久しぶりだった。
......
ショーは盛り上がった。
芸人として売れない時代 支えてくれた元カノの反応は
満面の笑顔で楽しむ天使のようだった。
もちろん、イチお客さんとしての反応であることは
理解している。
一瞬でこの場から衣装のまま
逃げたいと思った。
あの日のように
近鉄アーバンライナーに乗って
泣きながら大阪へ逃げ帰りたかった。
だがもうそれはできない。
いくぞいくぞいくぞ!
こんなに自分を鼓舞するのは久しぶりだった。
......
ショーは盛り上がった。
芸人として売れない時代 支えてくれた元カノの反応は
満面の笑顔で楽しむ天使のようだった。
もちろん、イチお客さんとしての反応であることは
理解している。
ショーが終わった後、会場で
ほんの一瞬だが少しだけ話した。
どんなことを話したかは
正直覚えていない。
ほんの一瞬だが少しだけ話した。
どんなことを話したかは
正直覚えていない。
会は無事に素敵な空間となり
僕は仕事を終えた。新郎は少し笑いながら
僕に話しかけた。どうやら全て経緯を知っていたそうだ。
おいおい。仕事をくれたことはほんとに嬉しいが
今までで一番精神的ハードルの高い仕事だったよ。
僕は仕事を終えた。新郎は少し笑いながら
僕に話しかけた。どうやら全て経緯を知っていたそうだ。
おいおい。仕事をくれたことはほんとに嬉しいが
今までで一番精神的ハードルの高い仕事だったよ。
でもありがとう。おかげでひとつ
過去と向き合って強くなれた。
そんな気がした。
過去と向き合って強くなれた。
そんな気がした。
会はおひらきとなり
カメラマンの友人と 二人で
小さなラーメン屋に入り
夜食を食べた。
おそろしいほどの達成感と開放感と
空虚感に覆われながら
ラーメンを食べた。
あっさりとしたスープが喉を潤してくれる。
美味しかった。
「今日はがんばったよ。がんばったな。」
友人の言葉が嬉しかった。
カメラマンの友人と 二人で
小さなラーメン屋に入り
夜食を食べた。
おそろしいほどの達成感と開放感と
空虚感に覆われながら
ラーメンを食べた。
あっさりとしたスープが喉を潤してくれる。
美味しかった。
「今日はがんばったよ。がんばったな。」
友人の言葉が嬉しかった。
きっともうあの子と会うことはないだろう。
でもそれでよいのだ。
僕は 無事に芸で飯が食えるようになった。
ステージで活動できていること
それをみせられたことが嬉しかった。
きっとそんなことはささいな出来事にうつるかと思うが
売れていない時代を見てくれていた子が
応援してくれていた人が
今もどこかで元気でいてくれることが嬉しい。
でもそれでよいのだ。
僕は 無事に芸で飯が食えるようになった。
ステージで活動できていること
それをみせられたことが嬉しかった。
きっとそんなことはささいな出来事にうつるかと思うが
売れていない時代を見てくれていた子が
応援してくれていた人が
今もどこかで元気でいてくれることが嬉しい。
人はこうして過去と向き合いながら
小さな自分と向き合って立ち向かい
なんとも些細な出来事だとあとからふりかえりつつ
乗り越えて成長していくのだろう。
小さな自分と向き合って立ち向かい
なんとも些細な出来事だとあとからふりかえりつつ
乗り越えて成長していくのだろう。
いつだって男は
元カノの成分で
できているって思う。
元カノの成分で
できているって思う。
いやほんと
ありがとう。
ありがとう。
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