【第四話】化けの皮が剥がされ丸裸になった心

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私が古ぼけた小さな図書室で、ふと手に取ったー冊の本。

その本には、

「アドラー心理学」

と書いてあった。

「アドラー心理学」と言えば、『嫌われる勇気』という青い表紙の本を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。

「うわっ…なんか難しそう…」と感じてしまった勉強アレルギーの方も安心してほしい。

私が手に取ったのは、活字本ではなく漫画である。

精神科医のゆうきゆう先生が書かれた本で、内容は大変ふざけた…いや失礼、私のように無知な人間でもサクっとわかるように難しい精神論をとても噛み砕いて書いてある、なんともありがたい漫画である。

「そんなこと言いながら、どうせ結構おカタい漫画なんでしょう?」ともし思われたならば、ぜひいちど「ゆうきゆう」で検索してみて欲しい。

親切なことに、ホームページでも漫画が読めるようになっている。

ちなみに私が最も好きな登場人物は、どエムのおじいちゃん「官越好蔵」である。

漫画の中で、それはそれは嬉しそうに、たびたび美女からろうそくのろうを垂らされたり、クサリに繋がれたりしている。

しかし、この少々おかしな設定の漫画が、本来の内容までおかしいかというと、決してそんな事はない。

大切なポイントはしっかりと章の最後に簡潔にまとめられている。

もしあなたが、心理学について興味があるが、長ったらしい活字を目にすると途端に頭の中がどこか遠くのお空へ飛んでいってしまうような私のような人間なのであれば、ゆうきゆう先生の著書は強くオススメしたい。

まるで、この本の回し者のようになってきたので、そろそろ本題に戻ろう。

ちなみに、もちろんゆうきゆう先生からは1円ももらっていないので、その点は安心して欲しい。


この本の中で、今の私の胸にぐさりと刺さった言葉がある。

その言葉とは、

「課題は分離せよ」。


アドラーによると、「課題の分離」とは、「他人の課題と自分の課題は別と考えること」である。

今の私の状況を例にあげると、たとえ親子といえども、私と息子は別々の人間であり、「私のスマホ依存」と「息子のスマホ依存」はそれぞれ別々の課題であると言えるだろう。


アドラーの理論にのっとれば、今の私は、本来別々の課題であるはずの二つの課題を頭の中でゴチャ混ぜにすることにより、わざわざ自ら問題を複雑にして、

「スマホ依存についての正しい知識を知りたくない」

という目的を達成しようとしているのである。


この本にはさらに、

「目的のために原因を作ったり、強く使うこともある」

との記述がある。


昨日の息子のYouTubeに関する話を読まれた方の多くはきっと、

「とても心配な状況だ…」

と思われたことだろう。

もちろん、あの話は嘘ではない。


ただ1つ告白したいことがある。


それは、

「決して毎日毎日あのような状況であるわけではない」

ということだ。


実際に昨日は、保育園から帰ってきた息子は一度もYouTubeを見ることもなく、泣きわめくこともなく、夜の8時には布団に入ってすやすやと眠った。

もちろん「ブーブー!」と言ってはくるものの、スマホを息子の見えないところに置き、

「ブーブーないよ。まんま食べるよ」

「ブーブーないよ。ここにおもちゃがあるよ」

と、こちらが落ち着いて声をかければ、わりとすぐにあきらめ、怒り狂うこともなく、ご機嫌にご飯を食べたり音が鳴るおもちゃで遊んだりしていた。


そんな日もたくさんあるにもかかわらず、私はあたかも息子が毎日毎日地獄のようなYouTube漬けの日々を過ごしているかのような記述をしてしまった。

私は、

「スマホ依存の真実を知りたくない言い訳を作る」

という目的達成のために、"話を盛った"と言っていいだろう。

もしこの告白でみなさんに不快な思いをさせてしまったのであれば、大変申し訳ない。

しかし、自分と息子の課題は全く別物であると気付かされてしまった以上、もう私がこの言い訳の切り札を使うことはできない。

私に残された選択肢はただ1つ。


「自分自身のスマホ依存脱却」

という目の前の課題に向けて、行動を起こすことだ。


こんな絶頂の気分の時にすぐさま行動を起こし始めたかったが、残念ながらここで息子を保育園に迎えに行かなければならない時間となった。


駐車場まで向かう帰り道、どこか懐かしい甘い香りが鼻をくすぐった。

ふと道路の脇に目をやると、あたり一面にキンモクセイが咲き乱れていた。


「大切なことに気づいたね」


私の目には、そのキンモクセイがたちがまるで私にそう言って微笑みかけてくれているかのように見えた。


次の日、私は「発達障害支援センター」を訪れていた。

たまたまこの日が初めての相談日として予約していた日であったのだ。

私は自己紹介もそこそこに、相談員の女性の前でそのゆうきゆう先生の本をいつもパンパンのカバンの中からゴソゴソと取り出し、昨日この本を読んだこと、そして大切なことに気づいたことを、

「ねぇ、あなたもそう思うでしょう!」

と言わんばかりに興奮気味に話した。

しかし、相談員から返ってきた言葉は、私の期待していた言葉とは全く違うものであった。


ーつづくー

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