【第七話】奇跡の予感

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「スマホ依存 漫画」で検索してヒットした本。

それは、まさかの私が大好きなゆうきゆう先生の本だった。

タイトルは、『マンガで分かる心療内科 依存症編(ネット•スマホゲーム•ギャンブル•ポルノ)』

「なんだ!今の私にぴったりの本書いてくれてたんだ!」と、私はすぐにその本を注文した。

届いた本のページを早速めくると、さすがはゆうきゆう先生。

基本はギャグ漫画なので、たまにプッと吹き出しながらサクサクと読み進められる。

どうもこの本の内容によると、依存症の克服に何よりも重要なのは、依存の対象を「やめる」のではなく、「他のもので満たす」ということらしい。

私の心が満たされるものとは一体何なんだろう?

ふと思いついたのは、「音楽」だった。

中学二年生の頃、友達にカラオケに初めて連れて行ってもらった。

大きくなってから人前で歌ったことなんてなかった私はめちゃくちゃ緊張してしまい、声が裏返り、音程も外しまくりで友達も苦笑い。

私のカラオケ初体験は悲惨なものだった。

でも、それから私はカラオケの楽しさに目覚めた。

その頃もともとあまり学校に行っていなかった私は、毎日のように親の財布からお金を抜き取りカラオケに通うようになった。

私はいつしか家のお風呂でも歌を練習するようになった。

お風呂で歌うと自分の歌声がめちゃくちゃうまいと勘違いしてしまうよくある錯覚にまんまとハマっていき、毎日のように単独ライブを繰り広げていた。

静まり返った夜の街には、私の聞くにたえない歌声が想像以上に響き渡っていたらしく、
「ご近所の方から、歌声がうるさいと苦情が来ています」
と警察が家に訪ねてくるほどだった。

その頃は家庭内もとてもぐちゃぐちゃしていて、家の中に私の居場所はなかった。

音楽に夢中で没頭しているその時間だけは、何もかも忘れられるような気がした。

私の心は音楽に救われていた。


「音楽に依存の対象をすり替えてみるってのもありかもな。」

私はふとそう思った。

まぁものは試しだ。とりあえずやってみないことにはどう転ぶかなんて誰にもわからない。

でも何をしたらいいんだろう?

私はとりあえず自分の歌声を10秒ほどFacebookにアップしてみることにした。

…なんだこれ。

めちゃくちゃ恥ずかしいぞ。

顔から火が出そうなほど恥ずかしい。

どうせ黒歴史になるだけだ。

やっぱり消そう。

…いや待て。

チャンスはどこに転がっているかわからないだろう。

もしかしたら奇跡が起こるかもしれないだろう。

大丈夫。そんなにたくさんの人から見られることなんてまずないから。

小心者だったこれまでの私が削除ボタンを押そうとするその指を、そんな私から脱却したい今の私が必死で押さえつけているような、そんな感覚だった。

それから数日経ったある日、Facebookにある人物から一件のメッセージが届いた。

そのメッセージを開くと、その内容は驚くべきものだった。

ーつづくー

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