【恋愛短篇小説】砕け散る花びら
満開の桜が咲いた。
もう、4月なのか。
約束の場所に、私は来た。来ない彼を待っている。なぜ、来ないのかもわかっている。
約束の前に、本心を会話の中から知ってしまったからだ。彼は本心がでてしまったことにすら気づいていない。
『彼女は妹の大切な友人なんだ』
友達のお兄さんに恋をしていた私は。
その言葉に、胸をサクッと、小さく切り刻まれたような痛みが走る。
痛い。
それだけじゃない。 これまでも
綺麗なお姉さんや可愛い後輩を可愛がる彼をみて、誰に対しても優しくて、誤解をさせる人なんだな、ということが分かった。
彼の特別になろうとして
告白をする前に、自分が恋の土俵にすら立っていなかったことに、気づいてしまう。
ああ、彼は妹の友達、という概念を抜けられなかったのか。
彼の、特別に、なりたかった。
はらはらと、舞い散る桜の花びらのように、私もはらはらと涙を零していた。
泣いたところで、もうどうにもならない。
ずっと片想いをするのは、
茨の道を裸足で歩いていくようなもの。
両想いになれるかも、そう思えるうちは女の子は恋を頑張る。
諦める瞬間は、きっと。
【私は選ばれない】という確証を持った時なのだ。
きっとこれから先も私はたくさんの女の子の中のひとりとして、彼から大切にされるだろう。
それじゃ嫌だ、と思ったから
【恋をした】のにね。
届かなかった。
バレンタインに渡した、色とりどりの【マカロン】も、私以外の人のプレゼントと一緒に紙袋にいれて、持ち帰る姿を、みたときに、胸が張り裂けそうで。
痛すぎて、自宅についたと同時に、ベットで声を押し殺して泣いた。
私だけを、みてくれる人が必ずいる。
失恋は時間が癒してくれる。
これからも私は、【友達のお兄さん】として関わり続ける。いつか彼に彼女が出来ても、傍にいる。
いれる、のか、な。
それでも友達のお兄さんだから
これからも関わるだろう。
恋したことは、後悔していない。
「ツバキ」
声がした。彼の。
「え」
空耳かとおもって振り向くと、そこに彼は、いた。
「約束、した、だろ。」
やくそく。
夢。かな。
「妹の友達、なんでしょ?」
「恥ずかしくて、そう言った。俺が悪い」
逢えた。嬉しくて頬が染る。口元が緩む。嬉しくて飛びつきたい。
「私のこと、どう思ってるの?」
「聞くなよ」
「私と付き合ってください」
「あー、はい」
花びらが舞い散る。春風と共に。
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