【短編小説】和風に恋をして〜ｽﾋﾟﾝｵﾌ〜

テレビのボリュームを絞って消音にするとき、音が一瞬で消えるけど

人間は、予期せぬショックをうけると、耳が聴こえなくなることを、知る。

「お爺様.......まで逝かれてしまうのですね」

いのり、歯科衛生士、22歳。

私には父親も母親もいない。私が生まれて直ぐに飛行機事故で亡くなる。そして22歳、72歳になった育ての祖父を、交通事故で亡くす。

もはや、悪霊に取り憑かれているのだろうか。

私は【天涯孤独】となった。

兄弟も姉妹もいない。家は普通の家庭でお金持ちでもない。

救われたのは、専門学校に3年間通い、歯科衛生士の国家試験を受けて、歯科衛生士となって働いている、ということ。

そして、出てきたのが

【お爺様の遺言書】だ。

【いのり、お前に婚約者をみつけてある。私の親友の孫で、そいつには5人の男の子の兄弟の孫がいるから、その中から好きなやつを選ぶといい】

は？

まって。

まて。

婚約者？！？！！

ついたところは

【御屋敷】

本堂.......本堂ってあの和菓子の銘店の本店？

和菓子屋の御曹司の孫？！？！

【郵便局員タケシ 35歳】長男

「おお、随分と若い娘さんだね。怯えなくていいよ。和菓子屋つぐのはこの中の誰か、だから」

1番年上であろう、落ち着いた雰囲気のフチなしメガネの似合う知的な男性。

【システムエンジニア 28歳ヒロ】三男

「なんだよ、顔ふつー。もっと美少女がくると思ったんだけど。まあ、俺を選ぶなら優しくしてやってもいいけどな」

高身長イケメンだけど、口が悪い。声もいいが、私が男性慣れしていないせいか、彼と目があうと、反らしてしまう。

【エリートサラリーマンノブ 26歳】四男

「怯えてる、怯えてる。こわいよねぇ、そうだよねぇ。女の子には優しくしないとね。俺は怖くないよ」

と言いながらくくっ、と悪魔のような微笑みを交わしてくる。声が、低くて響く。言うことを聞いてしまいそうになる声と、でもいうのか。

【カメラマンイクト 21歳】五男

「これはこれは。同い年くらいかな？僕はイクトと申します。兄達が個性豊かで申し訳ございません。歳なら近い方が話しやすいよね？僕は陰キャ大歓迎だよ」

まるでマジシャンのような出で立ちと、紳士な口調。幼い容姿に似合わぬただならぬ空気を持ち合わせる末っ子。

凄いメンバーで、腰がひける。

【リウ 30歳歯科医】次男

「歯科衛生士、なんだろ？俺は歯科医。仕事が同じだと話もあうよな？俺が1番変わり種だけど、よろしくな！」

明るくてくしゃくしゃの笑顔の歯医者さんで。唯一手を差し出してきたので

握手をする。

この人が1番まともそう？

【ゆか 22歳活発、勝気】

「いのり！ちょっと。これ、みて、私達も呼ばれてるの。同期も、同じ人数」

「ゆか？！」

どうやら祖父は、私の親友の4人も呼んでいたらしい。

【みすず 22歳クールビューティ】

「あのおじいちゃま、いのりが心配だから私たちは監視役ってところかしら」

「みすず、留学からいつ帰国したの」

【ほのか 22歳世話焼き】

「きゃー！！イケメン！お金持ち！えーいいな、いいな。1人選んだら他の4人は私たちが選んでもいいの？」

「ほのか、相変わらずミーハーなんだね」

【まい 22歳面白い】

「まあ、この4人さんたちも選ぶ権利があるだろうけど。いのりの結婚相手をみつければいいのよね」

「わかってるようで、1番理解してないよね、まい。」

「そう、俺ら兄弟が相手をみつけて真っ先に結ばれた人に、この本堂家の全財産を相続する権利がある」

長男のタケシさんが

真顔で言う。

お金が絡むと、人間は、変わる。

え？

相手が私じゃなくても、カップル成立したらその兄弟と相手が相続権があるってこと？

「楽勝、だな」

次男のノブさんが、節目がちに笑う。

声も表情もセクシーなので、見ているだけで妊娠しそうだ。

【カップル成立になるまで屋敷から出られません】

そんなアナウンスが聴こえた。

お爺様.......

婚約者が、恐ろしいです。

恋愛じゃなくて、お金を争う、感じになっているのは、気のせいではないと思う。

To be continue。

【短編小説】和風に恋をして〜ｽﾋﾟﾝｵﾌ〜

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