眠らない男

前編: ある朝のガソリンスタンド
後編: ある設計事務所代表の哀愁
もう何年前の事か忘れたが生まれて初めて上部内視鏡検査を受けた時のお話。

上部内視鏡検査とは、口からカメラをお腹の中まで入れるという荒行である。
荒行と思っていたが、現在の医学の進歩は目覚ましいもので、今は麻酔で喉の感覚を麻痺させた上に眠くなる麻酔も打ってくれてほんとど苦痛無く出来るそうである。
そうなっているらしい。
自分の初体験は違いました。
まず喉の麻酔ということでコーヒー味のシャーベットを食す。

「これ、意外とうまいっすね。あー。なんか喉が・・・あ。すげー。まじで喉の感覚がなくなってきた。」
ちょっとハイテンションに看護士に語り続ける私。
どうでもよさげに「そーですかー」と相槌うちながら準備を続ける看護士。
「じゃ。次点滴しますねー。もし眠くなったら寝ていいですからね。」
と言い点滴セットをした後、去っていく看護士。
私はこの看護士の言葉をこのように受け取った。
「この注射で眠くなったら寝ても構わんが、それは根性の無いやつだ。このチキン野郎。」と
(本当は「寝て下さいね。意識があると苦しいですから」との意味だったと後に知る。)
それから、近代医学と私の意志力の一騎打ちが始まった。
(・・・いかん・・意識が・・・)が度々意識を失いそうになりながらも、近くに人(Dr)の気配を感じるとカッと目を見開き、「寝てませんよ。私は!」と必死にアピール。
遠い向こうで「まだだね。もう少し点滴の量増やしといて。」等の言葉が聞こえる。
・・・・・・・・
気がついたら自分は回復ベッドの上で眠っていた。
(しまったー!!!)と思い、すぐにベッドから起き上がり看護士を探す。
着替えた後、再び診察室にてDrと。
「大丈夫でした?いわのさん?相当に苦しそうでしたけど。」
「いやー。恥ずかしながら意識を失っておりまして・・・全然覚えていないんですよ。すみません。」
「あ。寝てたんですか・・・あれ・・・じゃー良かった。」
「え?寝て良かったんですか?」
「普通、あの点滴打ったらみんな大体数分で寝るんですけどね・・・岩野さん、いくら待っても寝ないから・・で、途中で麻酔の量増やしたんだけどそれでも目あいてたからね・・・」
「必死に意識を断ち切られないようにがんばってたんですが、がんばっちゃいけなかったんですね・・」
「ですよ。もうこれ以上薬入れたらやばいってレベルまでいっちゃいましたもん。それでも目が開いてたからもういいやって、内視鏡入れてったんですけどね。その間も岩野さん、ずーと目を見開いたままで・・・」
(あー・・なんとなく記憶がある・・・必死で目を開いてたような・・・)
「苦しそうにしてたから心配してたんですけど、良かったよかった・・・で。結果なんですけど・・」
というのが自分の内視鏡初体験でした。施術側はさぞかし「この患者、不気味だな・・意識があるのか無いのかわからん状態で、目だけが全開してて・・・」と思われた事だろう。
というわけで。皆さん、内視鏡検査で眠くなる薬打ってもらったら素直に寝ましょう。

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ある設計事務所代表の哀愁

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