【16】痛みと温度が同居した日 ~わたしのステージに360度の視界が開けた日~

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あれは夜明け前
わたしは渋谷の街にいて 遊んでた。

君から一本の電話が鳴ったとき 躊躇したのを覚えている。
なぜ躊躇したのかは君に秘密にしていたことがあったから。
後ろめたさがあった。

でも 電話をうけると君はこう言った。
「新しい曲ができたんだ」
電話の向こう側で 君のはにかむ笑顔が想像できた。

あの時に後ろめたさなんて考えずに 素直に歓べたら
きっと何かが違っていたかな。


仲間が心地よいのは 一緒にいると楽しいから。
そこには理由や理屈なんて必要なかった。

でも 仲間ではなくなってしまうかも知れない瞬間があると
それはそれで 何かが壊れてしまうようで怖かった。
男とか女とか、そういうの・・・・・ホント苦手。




やさしくなりたいと願ったのは
君がとても やさしい人だったから。
間違いを認めることができたのは
自分と向き合う覚悟を示した あの曲に気づけたから。

君を失った あの日の夜。
わたしは未だかつてない経験をしたよ。

深い海の底の様な場所にいて
息もできないほどに 涙を流し
君ならこんなトキ きっと あきらめないだろうって思って
必死で痛みに耐えようとしたけど・・・。

孤独と絶望のどん底には 何もないと思ってた。
きっと 待っているのは死神じゃないかって予感さえして
ここが わたしの最終目的地なのかもしれない、そう思うと安堵さえした。

冷え切った指先も
枯れそうにない涙も どうでもよくなってた。

だけど 死にたいは生きたいって必死な訴えなんだね。
そうでしょ?死にたいと願った君も通った道なんでしょう?
わたしが 信じられたのは 唯一それだけだった。


あきらめちゃいけない、あきらめちゃいけないあきらめちゃいけない
感謝を忘れているだけなんだよ、だから あきらめないで

自分に必死で言い聞かせた。


すると・・・・・


「わかってるよ」

光なんて届かぬところまで来たはずなのに
わたしの内側から はっきりとそんな声がした。

それは わたしの全てを知り、わたしの全てを理解する
満ち溢れたエネルギーだった。

わたしがその時に体験したこと。
命のどん底にも 命は流れていたという事実だった。

冷え切った体に温度が戻り始めたのを感じて
気づいたら 私の頬にはさっきとは違う あたたかな涙があふれてた。

誰に疑われようと 誰に理解されずとも
誰の中にも 全てをまるごと包み込む光の様な存在が在ることを知った日だった。

わたしのステージにはもともと360度の世界が開けていたのだと気づけた日。
わたしが わたしを生きてもいいのだと 許せた日。

これが わたしの人生2度目の 痛みと温度が同居した日。


君の唄ったあの曲を どこかで誰かが聴いている。
わたしが綴るコトバも同じように どこかで誰かが見ている。


君を失い 得た恩恵は いのち だった。
あの時 以上にやさしくなりたいと願うわたしがいるよ。

あれからいくつの季節が巡っただろうね。

でも そろそろ 君に会いに行く自分を許そうと思うよ。

ストーリーの主人公は 生きているってことを
トキに確認しなきゃならない。

めんどうでも やらなきゃいけない。

そうじゃなきゃ、人は感謝をすぐに忘れるから。

人生は素晴らしい。
人生を狂おしいほどに愛おしいと思えるのは
痛みも温度も まるごとを抱きしめることができる いのち があるから。


目立たないところで 咲いていたとしても
いのちには 同等の価値がある。

それを 忘れちゃいけない。

ストーリーに終わりはない。
だから 続きを見ようと思う。


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