私を助けたもの 音楽
音楽について
音楽は,最初に私を助けてくれたものだった。
私は洋楽よりも邦楽が好きで、メロディよりも歌詞を意識する方。
戦後から最新の(といっても、もうこの5年はさすがに最新曲はほとんど知らない。)邦楽はジャンル問わず好き。演歌に歌謡曲、ニューミュージック、Jポップ、たぶんそこそこの有名な人のシングルなら、大体歌うことはできる。祖母のレコードとNHKの歌謡ショー、ラジオから流れてくる曲を片っ端から好き嫌いなく聞いた。もちろん、テレビの音楽番組も全部観てた。特に気に入った曲は、ギターを何度も弾いて、歌った。
音楽はもちろん好きだけど、私の場合は、救われるために音楽を聞いた、という言い方が一番正しい。だから、音楽が好きという人と、ちょっと話が合わないように思っている。ギターは弾くけど、うまくなる意欲はなくて、コード弾きできればそれでいいと思っている。音にもこだわりはない。
フォークソング
音楽にはまるきっかけになったのは、フォークソングを知ったからだと思う。
小学6年生のとき、NHKでたまたま「フォーク大全集」という音楽番組を観た。それは、BSで放送されたものを総合で総集編にして流していたもので、坂崎幸之助さんが司会だった。「ヨイトマケのうた」「イムジン河」「遠い世界に」「くそくらえ節」「落陽」「僕の胸でおやすみ」・・・そのときの映像をよく覚えている。一音残さず聞こうと緊張するくらい、その音楽は衝撃だった。
聴いたことのない音楽、しゃべっているように歌っている、メロディーは単調だが耳に残る、そして歌詞、何かわからないけど、何かすごいことこの人たちは歌っている、ように思った。
そこから、フォークソングを知りたいと思って、レコード屋(僕らの時代はもうレコードは売ってなかったけど、CDショップではなくまだこういう言い方をしていた。)に行ったが、今でこそそれなりにそろっているけれど、その頃地方のレコード屋にはほとんどCDはなかった。それで、ラジオでフォークシンガーの歌が流れると、ラジカセの前で身構えて、カセットの録音ボタンをタイミングよく押してリピートしていた。
曲を覚えると、毎日のようにギターを夜中まで弾いていた。親からうるさいとよく怒られた。でも、何だか止められなかった。やらないと、何かが収まらない感じだった。
フォークの魅力
フォークソングに何の魅力があったか。それは、歌詞が素直で正直だったからだと思う。ストレートで、攻撃的で、情熱的で。情感があって、素朴で、淡々として。それがむき出しで、聴こえてくる感じ。それが私を響かせた。
その歌に、私もいて、歌うことで、私も泣いたり、暖かくなったり、叫ぶことができた。私はただ一人で苦しんでいるってことを忘れることができた。歌声に何かを託すことで、私はここにいるってことを感じることができた。
そして、歌は言葉をたくさん教えてくれた。こういう気持ちの時は、こういう風に言えばいい。苦しい気持ちもわかれば、それに振り回されることもなく、うまくすればコントロールすることもできる。それには、言葉や表現をわかることが大切。
それから、歌声は自由だった。「死にたい」も「愛してる」も「がんばれ」も歌にのせると、もっと軽やかで広かった。頭ではわからない自由さがあるって、歌は感じさせてくれるものがあった。
- 何かを借りて、あらわすこと
- 言葉を知ること
- 不思議なものに触れること
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