上野駅へ向かう為、電車のなか

ヨシダおじちゃん「お腹が減ってる時はね。バナナを食べるんだよ。安くてたくさんあるからね。でも、すぐ出ちゃうけどね。」
どりあん「(頷く)」
ヨシダおじちゃん「寒い時はね。山手線に乗っとくといいんだよ。ずっとグルグルまわっているからね。眠るにはちょうどいいの。」
どりあん「(頷く)」
おじちゃんは自分で自分のことを決してホームレスとは言わなかった。
だけど、持ち物や話の内容的にそうだと思う。
上野駅でお茶
お店に入る。
ヨシダおじちゃん「一杯ビールおごってもらっていいかい?」
どりあん「あ、はい。」
私はアイスコーヒーを頼んだ。
人がいっぱいで座るところがない。でも一個空いてたので先に座らせてもらう。
おじちゃんは椅子ひっぱってきて座る。水もついでもってきてくれた。

今日歩いた所の話をするため、おじちゃんは「駅にある路線図をもってくる」と言って探しに行ってくれた。
数分後に戻ってきて、路線図をテーブルの上に広げる。(「記念に」と東京案内のパンフレットも持って来てくれた。)
歩いて来た道筋を指でたどりながら話す。
合計でだいたい20キロぐらい歩いたみたい…(!)
ヨシダおじちゃん「もう一杯(ビール)いいかい?」
ビール代を渡す。カウンターに注文しに向かうおじちゃん。ビールを持って戻ってくる。
路線図を見ながら、ある場所を指差し、
ヨシダおじちゃん「ここはね。危ないから近づいてはダメだよ。ドスを持ってる人たちが居るからね。」
どりあん「ドス・・・?」
ヨシダおじちゃん「短い刀の事だよ。こうね、ジャケットの裏に隠してるんだよ。こうブスッと、いつでも刺せるようにね。」
・・おじちゃんの様子が変だ。酔っているのかもしれない。少し怖い。
それからもおじちゃんは裏の世界や、バブル時代の話をしはじめる。
ヨシダおじちゃん「実はね。大きい夢があるんだ。ほら、おじちゃんの後ろ斜めを見てご覧。サングラスをかけている女の人が居るだろう。ああ、あんまりじっと見ちゃダメだよ。そう、そのおばちゃん。そのおばちゃんからね。100万円投資してもらっているんだ。おじちゃんにすごい力があるって。そのお金でね、会社を作るんだ。会社を作って、たくさん稼いで、お金を返すんだ。投資っていうんだよ。わかる?投資。」
どりあん「大きい夢ですね。応援してます。。」
その時は投資の話を信じていたけど、酔ったおじちゃんの口調や表情、周りの空気感が変わっていた為、私は少し怯えていた。
ヨシダおじちゃん「ありがとう。・・時間は大丈夫かい?」
どりあん「はい。もうそろそろ・・。」
ヨシダおじちゃん「・・お金はちゃんと持ってるかい?ある?」
なぜだか直感的に危機を感じた。
どりあん「はい。大丈夫です。」
おじちゃんは私が怯えていることを感じとったのか、一瞬に元のおじちゃんの雰囲気に戻った。(気がした)
ヨシダおじちゃん「そうかい。良かった。おみあげちゃんと買ってあげなきゃダメだよ。おじちゃんはね、いい人だからいいけど、変な人も多いから、誰かに簡単についていっちゃだめだよ。また遊びに来てね。だいたい上野公園にいるから。公園に座ってる人に「ヨシダさん居ますか?」って聞いてくれたら伝わるから。お父さんやお母さんに話してね。おじちゃんと「こういうことしたんだよ。」とか「こういうとこに行ったんだよ」とか。日記とかノートとか、なんでもいいから今日のこと書いとくんだよ。おじちゃんのこと忘れないでね。」

改札まで見送ってもらう。
握手した温かかった。
お礼を言う。。
私の背中ぽんっ!と押して
ヨシダおじちゃん「もっと積極的にならないとダメだよっ!」
と言って姿が見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれてた。
泣きそうになった。
後日談。
それから私は熊本に帰り、その事を日記に書きました。お父さん、お母さん、色んな人に話しました。
おじちゃんのいう通り徐々にですが積極的に社会と、人と関わりはじめ、病も治り(幻想だと気がつきました)、
ボランティアしたりバイトをしたり劇団に入ったり芸術活動をしたり、と色んな人と関わっていくうちに元気を取り戻しました。
7年経った現在は社会人として、地元でやりたい仕事を見つけ働いています。
再びおじちゃんに会いに行くことはしていません。これからも会いに行くことはないと思います。
だけど今でも感謝しています。忘れず覚えています。
これからも話せる時は話していこうと思っています。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

