クリスマスの贈り物

前話: むかしむかしにむかしがありました。
モコちゃんとわたしは、ちいさなお家にたったふたりで静かに暮らしていた。
特別にすごく貧しいという暮らしではないんだけど、余計なものはなんにも無い生活をしようとしていた。
その中のひとつはお菓子。
夜帰ってから眠るまでの間にお菓子を食べる時間はいらないとも思いお菓子を買うという習慣はなかった。
代官山の町がイルミネーションに包まれているクリスマスの日。
わたしはモコちゃんにクリスマスプレゼントをわたした。
それは20センチくらいのサンタの服を着たクマ。
そのクマはプレゼントの入った白い袋を持っている。
「クリスマスプレゼントだよ」
って、クマさんを渡したら、モコちゃんはにこにこして
「ありがとう」ってわたしに言った。
そして、クマさんの持つているプレゼントの袋を空けてみた時、アメがみっつ入っているのを見つけた。
そのうちのひとつを口に入れて、モコちゃんは幸せそうな顔で、クマさんに話しかけている。
「どーも、どーも」ってぺこぺこお辞儀して。
モコちゃんはすっごく嬉しかったんだ。
こんなおいしいものをもらって。
こんなおいしいものをくれたクマさんにお礼がいいたくて。
きっと「ありがとう」以上のありがとうを伝えたい気持ちが「どーも」って言葉になったんじゃないかなぁ。
「どうもありがとうって」ありがとうよりありがたいイメージでしょ。

その頃わたしが考えていたこと。
ハレの日とケの日。
昔の人が、ハレの日を喜べるのは、ケの日々があればこそ。
毎日がハレの日になりつつある現在では、子どもたちはどんな時に嬉しいって感じられるのか?
おいしいものを食べる、楽しいところにいく、そんなことを特別の日にするためには何もない毎日、ケを意識して作り続けないといけないんじゃないかって。

そんな思いもあったからこそのお菓子の無い生活。
そんな毎日だったからこそのモコちゃんのクリスマスの幸せ。

380円のクマさんに、感謝を伝えるモコちゃん。
何もない毎日をせっせせっせと積み重ねていった日々。
わたしにとってはいつまでも懐かしいクリスマスの思い出です。

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