望まぬ地位の価値

前話: 地位という魔物
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六本木交差点に程近い喫茶店の入口のドアをカランカランと開けると真央が一番奥の席にいた。
真央の顔を見るのは1ヶ月ぶりだった。
「久しぶりだね」と真央の変わらぬ笑顔がうれしかった。
いつものアメリカンコーヒーを頼むと窓越しの外に雪が舞い降りてきた。
「雪だね。なんかいいね」
それから何故か真央の言葉は少なく、うつむいた表情だった。
「どうしたの?何かあった?」
実はね・・・私ね、許婚がいるの、お父さんの知り合いの会社社長の息子さんで
私と幼馴染みで昔からよく知っている人なんだけど今回その会社を継ぐみたいで、
海外に社長になるため勉強に留学する前に私と婚約させたいと言っているみたいなの・・・
私は前から知っている人だし凄く誠実で優しい人だから・・・まったく嫌っていう感じでもないんだけど・・・
「なんでそんな笑顔で話せんだよ!」俺は心の奥でそう想っていた

「いいんじゃない」

俺はとっさに思っていもいない言葉で返してしまった。
なんだよっやっぱりお嬢は・・・金持ちは・・・レールの上を歩くようになっているんだ
何を俺は夢みてたんだろう?何を期待していたんだろう?
AV、風俗、キャバクラ・・・接待ブローカー・・・
こんな俺がこの子と本気でうまく付き合っていけるなんて想っていた自分が悔しくてしかたなかった。

地位という悪魔のささやき

外は雪が時間を追うことに強くなっていた。
何故だろう?あんな愛しかった真央が遠くに感じ心の奥には人生のジェラシーさえ生まれていたように感じた。
「真央・・・明日何してる??」
「明日は特に予定今のところないよ」
「明日さぁ、あるクライアントが海外から来るんだけど、商談まとめるために英語が話せる子を紹介してくれって依頼があってさぁ」
「明日頼めないかなぁ?」
「いいよ」
「じゃあ明日お台場のインターコンチネンタルホテルのロビーに18時に来て」
「じゃあ~俺いくわ」
会計を済ませ、真央を一人おき、俺は喫茶店を出た。
出たというよりも逃げたというのがホントのところ。
雪の中タクシーに乗り、自分が言った言葉を頭の中で振り返っていた・・・
俺は何を言っていたんだろう・・・?
俺はなんであんなことを言ってしまったのだろう・・・?
昨日の俺の気持ちは何処にいってしまったのだろう・・・?
真央は今何を想っているだろう・・・?
心が痛い・・・真央に会いたい・・・




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気持ちのすれ違い

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