プロローグ 「勇馬、一緒に自転車でヨーロッパ横断しようぜ」
「勇馬、一緒に自転車でヨーロッパ横断しようぜ」
星野広大は、ポカラのカフェでこう切り出した。
「まじ楽しそうじゃない?勇馬なら出来るって」
2012.6.14 この男の提案に衝撃を受けた。
そして、その後の運命が大きく変わったのである。
ネパール首都カトマンズから西へ約200km離れた位置にあるポカラは、北はチベット東にブータンバングラディシュ、南はインドに囲まれている。ポカラは、ネパール第2の都市であるが、都市というには少し貧弱である。ビルなどの大きな建物はなく、停電も毎日起こる。ただロケーションとしては最高でエベレスト山脈系アンナプルナへのトレッキングの出発地でエベレスト山脈を望む、湖畔の村である。
勇馬は、アンナプルナの最深部ベースキャンプ4150mを目指す10日のトレッキングを通じて、様々な経験をした。4000mの世界に轟々と流れる川があり、豊富な水源のおかげで草花が生い茂っている。まさか4000mでこんな夢のような世界と巡り合えるとは思っていなかった。そして何より、この場所は360度7-8000級の山々に囲まれる世界唯一の聖域である。共に過ごしたドイツ人、アメリカ人の女の子、ニュージーランドからやってきた若い夫婦と共に汗を流しつかみ取った景色がいまも余韻として身体の中にあった。
Road to Annapurna Sanctuary youtube~素敵な景色をお楽しみください。~
山から下山した翌朝、Hotel the Cherry Garden~学の家~ではオーナーの学が日本人らしき男と一緒にダルバートを手で食べていた。*ちなみにネパール人はいつもこのダルバートを食べている。(ダル=豆 バート=米を合わせた造語である。)が、朝食には参加せずに、荷物を片づけ、冷蔵庫に冷やしてあったビールを飲みながらWifiをしに街へと出た。
湖畔を歩き、雲に隠れるエベレスト山脈方向に向いて目を閉じる。そこには、くっきりと猛々しい山々の姿がくっきりと浮かび上がる。そして身体全身が熱くなるっていることに気が付いた。大きく深呼吸とストレッチをして、メインストリートに戻った。
メインストリートでダルバートを学と共に手で食っていた日本人と出会う。
お互い会釈をすると、彼は慣れた対応で近寄ってくる
「はじめまして、宿一緒だよね?俺、コウダイ 星野広大ねよろしく」
「おれユウマ、浜吉勇馬。広大さんは旅人?」
長期旅行者と短期旅行者の違いは風貌に現れる。
「そうだよ、勇馬も?」
また然り。長髪に汚い服装w
「うん、今日これからの予定は?」
「ぼーっとネットかな?」
「俺も予定ないから、一緒にどう?」
「いいよ」
と言った感じで、遠い異国の地では、日本人同士の旅人といっただけで誰とでも仲良くなれるのである。
よく言えば旅慣れした、いやただ汚い2人は湖畔のお洒落なカフェへと繰り出した。
広大
「俺は、ラフティングから帰ってきたところやねん、日本でインストやってるから世界一周中に激流をせめててな!今回もインド人観光客のガイドやってたわ~おもろかったよ」
勇馬
「おれは、10日間のトレッキングでABC攻めてきたわ、マチュピチュレが段々と大きく見えてきて自分の足で近づいて行っている感がすごく良かったよ。」
出会ってすぐの2人であったが、お互いネパールの大自然を経験した共通項をネタに熱く語り合ったのである。そして、一通り話を終えて旅の今後へと話は移ろうとしている。そこで広大は、勇馬に切り出したのだった。
「勇馬、一緒に自転車でヨーロッパ横断しようぜ」
星野広大は、ポカラのカフェでこう切り出した。
「まじ楽しそうじゃない?勇馬なら出来るって」
広大は勇馬にそう言って、手元に置いてあった手帳に何かを書き出した。
線と線で繋がれた骨格に、曖昧なローマ字で綴られていく。
Buru... Italy Germany Frenc Spain
「道は決めてないけど、ブルガリやからスペインまで自転車旅するねん。」
「これは俺の夢やねん」
勇馬は、自分の思考の中にずかずかと土足で入ってくる関西弁の広大の言葉を理解しようと必死であった。
「ざっと計算して、4~5000キロかな」
これは、その時に示された大まかなルートである。この時は、グーグル先生もこれ程優秀ではなかった。
広大は止まらない「ブルガリアからスタートしてイタリアに向かって、そっから北上してドイツまで、その後西へと進路を切り替えてツールドフランスの最終コースパリを走ってな、そのままボルドーとかでワインを飲みながら、ピレネー山脈を超えてスペイン南部グラナダまでや!」
「7月初旬に集まって8月中にスペインいこうと思ってる」
「今は仲間は2人、もう1人とはフィリピンの語学留学中に一緒だった20歳の男でシュウ君」
「彼はすごい奴やねん。すでに日本縦断1か月でやりおって」
「だから何も心配いらんよ、経験者がいるから」
「それに、ヨーロッパは自転車文化だからもし疲れたら自転車降りて電車に乗ったりもできるんやで」
「基本は自由や、行きたい国があれば、行けばいいし、また途中で合流もまた然りや」
「こんな経験今しか出来ひんで、一緒にやろう」
リーダー星野広大との出会い、壮大な挑戦自転車ヨーロッパ横断はこうしてスタートしたのだ。
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