第1章 葛藤 広大と別れた勇馬は、満員列車の中で揺れている。

前話: プロローグ 「勇馬、一緒に自転車でヨーロッパ横断しようぜ」
次話: 第2章 集合 イスタンブールから夜行バスに揺らて約束の地へと向かう~自転車ヨーロッパ横断4600kmの奇跡~僕たちが越え続けた死線の先にあるもの~
広大と別れた勇馬は、満員列車の2階席で揺れている。
ただし、周りはスーツに身を固めた男たちではない。色とりどりの民族衣装と装飾品に身を固めた女性に、布きれ一枚を身体にまとう男、濃い黄褐色の肌を持つスーツケースを抱えた若者。目を輝かせ閉まらない列車の扉から身を投げ出し風を感じる少年。至る所に人が溢れている。

聖なる河ガンジス。聖なる河の裏腹に、世界で最も汚い(汚染の進んだ)河としても有名である。長期旅行者は、ガンジスにチャレンジをして病院送りされたモノが後を絶たない。この写真の川の色は加工を全くしていない。むしろ綺麗な感じに映ってしまっている。くらいである。

勇馬は、聖なる河ガンガーからタージマハルへ向かう為に、インド横断夜行列車の中にいた。
列車のチケット手配を頼んだ業者の男は、前日の夕刻私の宿泊していた宿に黄ばんだTシャツにデニム姿でやってきて、やってきて呑気に語りだした。
「はい、ゆーま。あなたのチケット満席で手配できなかった。次の便は、1週間後。まぁバラナシでゆっくりしていきな!」
「チケット無いの?1週間も待てないよ。」
「これがインドさ、方法はある。」
「キャンセル待ちを並ぶ、あとは切符持たずに電車に乗り込み、賄賂渡してチケット手配してもらいな」
といって、チケット売りの兄さんは帰っていった。

1週間待てずに、旅路を急いだ私は出発時刻より早く駅に向かいキャンセル待ちのチケットを買いに行くのだが、今日の便はだめだと。取り合ってくれない。仕方がないので、

最終案賄賂での座席確保作戦にでるのだが、それ戦いにも敗れたために

最低ランクの座席も確保できず、

車両と車両の間のトイレの前の空いたスペースにインド人と肩を寄せ合いながら身をかがめていた。

どこかの駅に停車した後、勇馬の横にガリガリの若者と豊満な身体をゆさゆさ揺らしながら隣の小さな小さなスペースに身体を滑り込ませてきた。

列車のリズムと脂質たっぷりなインドガールの肉体の揺れの中で、勇馬は夏の予定をどうしようかと揺れていた。

勇馬の夏のヨーロッパ妄想

自分の考えていた夏のヨーロッパ「豪遊プラン、ボルドー、シャトーワイナリー巡り、ベルギービール巡り、アイルランドシングルモルト蒸留所巡り、イギリスゴルフ修行が頭の中で駆け巡っていた。
広大と別れてから、毎日のように繰り広げられるこの葛藤、どうやっても広大の提案が頭から離れないのであった。

星野広大の壮大な夢「自転車でのヨーロッパ横断」

インドの横断深夜列車の最下級席のシートも取れずに、連結部のトイレ前に腰を下ろし、豊満な肉体のインドガールと身体を寄せ合いながら彼女の中で揺れていると考えがある方向へと走り出した。

厳しいから、面白い、今しか出来ない経験をやろうと。

厳しい経験を共有すること、共に汗を流し、一つの夢を達成する事

そんな青春ドラマのような経験がいま目の前転がり込んできた

やろうよ。俺は自転車旅に魅かれている。そこに嘘は付けない。

心のモヤモヤも消えた頃には、隣でプルプルと脂肪を揺らすインドガールとの間にも一体感が生まれていて、僕と彼女はお互いに身を寄せ合いながら連結部のトイレの前通路を埋め尽くす人達の中で眠りについた。

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