Rickenbackerに憧れて(4)

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実は、それまでメインにしていたGRECOのジャズベースは高校卒業時にバンドの後輩に譲り渡した。実はもともとあのベースは先輩から受け継がれたものだった。自分が何代目かは判らなかったが、先輩に言われた通りの説明をして譲った。その後も何代か受け継がれていたらしいが、現在はどうなっているのだろうか。
ともかく第一志望はダメだったが浪人せずに進学出来た。これを機会に東京での一人暮らしを始めた。アパートには楽器全部を持ってくる訳にはいかず、とりあえずSG1000とWestminster4001を置いていた。アンプを持ち込むスペースも無く、当時はヘッドフォン・アンプ等も無かったのでステレオにプラグインして弾いていた。
高校時代から「バリバリ伝説」に感化されていたため、大学ではオートバイのサークルに入った事もあり、楽器は地元の喫茶店でのセッションや自宅での練習が主であまり本腰を入れていなかった。あの頃にJAZZ研究会か軽音楽サークルにでも入っていれば、もっと違った充実した音楽生活になっていたと思う。
当時はJ-Rockの全盛期で、BOφWY、ブルー・ハーツ。ジュンスカ、バービー・ボーイズ、泉谷しげる等が爆発的な人気を誇り、レピッシュやユニコーンやプライベーツ等個性派が学園祭を彩り、AKBの源泉となったオールナイターズやおニャン子クラブがテレビを席巻していた。
バイトをしていたレンタルビデオ店には、沢山の芸能人やミュージシャンがお客様として来店していて上記のバンドのメンバーも来ていた。バイト仲間にも大手レコード会社のローディーや、タレントのマネージャー、インディーズバンドのメンバー、某芸能人の妹、バンド雑誌のライター等そっち関係者が多くいた。

ある日、大学の友人からベースを売りたがっている後輩がいると言われ、駒沢公園で待ち合わせをした。やってきたのは初々しい1年生の女の子。そもそもバイクでレースなぞやっている男ばかりのむさ苦しいサークル生活だったため、気の利いた話は出来なかったが、結局彼女が持って来たベースを1万5千円で買った。

それが、現在までもメインベースで活躍しているFender JapanのJVシリアルのブラックのバスウッド・ボディのジャズベース。Fender本社との提携でFujigenが製造していた時期のもの(現在は東海楽器とダイナ楽器)でおそらく84年製造と思われる。現在JVシリアルものはマニアが血眼になって探しているらしい。

それまで弾いて来たGRECOのジャズベースと全く違うネックの形状に「なんだこれ、おそろしいくらい弾きやすい」と愕然とした。コピーモデルと本物の違いはペグのスムーズさからストラップで下げた時のバランスの良さ含め楽器全体で感じた。もし、Rickenbackerも本物だったら、全く違う感動があるのだろうか?

さて、そのFender Japanのジャズベースはステレオに入れてみると、フロント・ピックアップが断線しているらしく、小さな音しか出ていなかったのでお茶の水の楽器街へパーツを探しに出た。財力が無いのでFender Japan純正のものが中古で安く買えれば良いなぁ、程度の気持ちだった。

某カスタムギターで有名な大手楽器店内をうろうろしていると、リペア工房の入口に「どれでも1個700円!」と書いた箱に、無造作に詰められた複数のピックアップがあった。Fenderのピックアップが無いかとゴソゴソしていたらAlembicのパッシブのジャズベースタイプのピックアップのセットを発見してしまった!

このピックアップが中古とはいえセットで1400円はあり得ない。1個10000円でもおかしくない。その場にいた店員(店長?)におそるおそる「こ、これください。」と言うと「あれ?これ、そこに入ってた?あちゃー、でも仕方無いから、セットで1400円でいいよ。」「本当?」

喜び勇んでアパートに帰ると、半田ごて片手にピックアップを入れ替えた。今思えば、当時住んでいた世田谷区上馬付近には、後年有名になるカスタムギターメーカーやベース工房などがその頃から沢山あったので、どこかに持ち込めば調整まで完璧にやってくれたハズだが、知識も資金も不足していたのだと思う。

とにもかくにも、こうしてFender社の本物(当時Japan FenderはFender USAの製品も制作していた)に1流メーカーのピックアップを搭載したメインベースが完成し、バイクサークルも引退時期に入った事も手伝って、バイト仲間の誘いで業界人のバンドに入りパーティーの伴奏等を引き受けるようになった。

Westminster4001を練習に持って行った事もあったが「おお、マッドネスのベースみたいで格好良いス。」「フラット・ワウンドでポコポコにしちゃって。」など、田舎なら4001はハードロックかビートルズの話になるものだが、さすが放送や出版に関わる業界人はコメントが違うと思ったものだ。

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