車いすの男性と出会って結婚するに至るまでの5年間の話 その2

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プロローグの話題入りありがとうございます! たくさんの方に目を通していただいているみたいで、うれしいです。
10年以上前のことを思い出しながら書いているので、戻って修正したりしています。前回、連絡先を交換したと書きましたが、もう少し後のことでした。「その1」も訂正してあります。

すれ違い

翌週から、毎週日曜日はそのテニスコートに出向いて取材を重ねるつもりでいた。しかし、次の日曜日、入院していた父のところに行かなくてはならなくなり、テニスコートには行けなくなってしまった。連絡手段がない。ひと言、「今週は行けなくなりました」と、どうしても伝えたかった。取材すると言いながら、すぐに来なくなったと落胆されるのじゃないかと、そんなことが気にしまい、気が気じゃなかった。
そして、また次の日曜日になり、2週間ぶりにテニスコートに行った。いた。そしてどちらからともなく、連絡先を交換しようという話になり手書きのメモをもらった。見た目と違い、かわいらしい丸みのある文字だった。連絡先をもらって、とてもほっとしたのを覚えている。
その日は午後までテニスコートで過ごした。前回よりもたくさんの方が集まって、プレーしていた。車いすの方もいるし、健常の方もいる。私も混ぜて打たせてもらった。車いすの人がこんなにたくさんいて、健常の人とも普通にテニスをしている。普段見られない光景で、新鮮だったけれど、でも全く違和感がなかった。
お昼を食べるときに、みなさんからベンチを勧められた。「みんないす持参だから、座って」と。
「いす、持参」
車いすを利用していることを「いす持参」なんて言えちゃうんだと、すごく衝撃的だった。このフレーズはすごく気に入ってしまい、以降たびたび使っている。

その日はたくさん人がいるということもあって人目が気になってしまい、彼とは連絡先を交換したものの、それ以外あまり話ができなかった。帰り際にでも、少し話せたらな、と思っていた矢先に急に雨が降り出した。
幸い、私は傘を持っていたので特に不自由はしなかったのだが、かなりの土砂降り。これって、もしかして駅まで送ってもらえたりするのかな? なんて、打算的なことを考えてながら、きょろきょろを辺りを見回しても彼が見当たらない。他の方にも駅まで送ろうと声を掛けてもらったけど断った。
みんなどんどん車で帰っていく中、彼の車は駐車場に止まっている。雨の中でいかにも待っているみたいに立ってもいられず、ゆっくりだけど傘をさして駅のほうへ歩いていった。
後日、そのときの話を聞いた。彼は私を車で送ってくれるつもりでいた。帰り支度をするために洗面所などに寄っていて、その間に私は駅に向かってしまい、すれ違いになっていたようだ。傘をさして駅に向かう私の背中に向かって、雨に濡れながら、私の名前を呼び続けていたのだとか。その話を聞いたとき、映画かドラマのワンシーンみたいだね、と笑い合った。

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