秘密の扉
清々しい朝
ここは都会よりバスで30分ほど山道をあがった、山道と言っても、コンクリートに舗装された道の周りは、ほとんど一戸建てで埋まっているという有様で、うちの部屋の窓から隣の屋根が見え、その向こうに山があり、春のこの時期、早朝は様々な鳥の声が山のほうからさえずり、そういった環境に高橋家があった。
2013年4月のある朝、凉子はいつもとなく、すがすがしい気分で目覚めた。周りの風景が凉子を祝福しているかのように、凉子の周りに満ちあふれ、太陽の光が窓から差し込み、ハウスダクトさえ、光が当たってキラキラ、宝石みたいで綺麗と涼子は思った。
目覚めて朝一番、自分の身体に「おはよう、今日も一日よろしく」と言うことが日課になり、そのおかげかどうかは分からないが、ここ数年、病気になったことがない。どうして、こんなすがすがしい気分なのかしら、昨日あのようなことがあったというのにと凉子は思った。
昨日の出来事
昨日、アルバイト先で急に残業をする事になり、嫌々ながらも周りの状況に流され承諾してしまい仕事が予想よりも遅れ、帰宅は遅く最終バスに駆け込み乗車、依然嫌な気分を引きずり、車内は閑散、おっさん同士の会話が車内に響き、なお一層、凉子の気分は滅入った。
突然! 車内に罵声が響き。何事! おっさんは会話に夢中になり、乗り越したのだ。運転手に停車したかと怒鳴っていた、2~3分ほど怒鳴ると「覚えておけよ」と捨てぜりふを吐き去っていき、バスの運転手は大変な仕事だと思い、前にもこんな気持ちの時、同じような場面に遭遇した事が、湖面に一滴の水滴が落ちて、波紋が広がるように、自分の気持ちが周りに広がっているのではと思い、そういえば以前、伸一が「今あなたが見ている状況は、あなたの心の投影にすぎないだよ」と言っていた。
このことはこの証明じゃないか思ったら、ふと笑みがこぼれた。昨晩はそんなことが、あったと回想し、とりあえず着替え、顔を洗い、歯磨きをして一階に下りた。
秘密の扉02へと続く
著者の大東 豊さんに人生相談を申込む
著者の大東 豊さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます