母親の事が嫌いだったけれど、自分が親になって知ったたくさんのことと、これから親になるあなたへ

2 / 2 ページ

私「……しらない」

母「ろくに手伝いも、料理もできない、何を考えているのかわからない、あんたなんか、産むんじゃなかった!


あー、言っちゃった。それ、言っちゃった。

この会話だけは鮮明に覚えている。やっぱりワカメの理不尽さったらなかった。父は私に「何だお前、そんなことも知らないのか」とだけ言った。

お前も知らんやろうが

そこら辺から、夕食を一緒に食べることを拒んだ。
私の夕食は出なくなった。

幸い、(親の)お金だけはあった。べらぼうに稼いでいた母はお金に関しては本当に無頓着で、私が自由に使えるお金は常に5万円くらいはあった。芸能人の息子のようだ。
ちなみに今はありません、あの時のお金、貯金しておけばなぁー

18になった、家を出た

それから、何かある度に私は母と喧嘩になった。

「私のことを何も知ろうともしないのに偉そうに言わないで」

何度も、何度もそういった。「私のことをちゃんと見て、ちゃんと知ろうとして」と懇願しているのと変わりなかった。

でも、母にはその言葉は届かなかった。

あんたはいつも親のことを馬鹿にしている

していたのかもしれない、子ども1人満足に理解できなくて、自分のことだけを考えている両親を確かに軽視していたと思う。

私達は歩み寄ることのないまま、私は家を出た。

家を出てしばらくはほとんど連絡をしなかった、大学が楽しかったし、友だちといるほうがよっぽど充実していた。今までの悲しみや寂しさが嘘のような毎日だった。

GWや夏休みに家に帰ると、やっぱり厄介者扱いされた。

あんたが帰ってくると家が汚れる

悲しかった。事実そうだったのかもしれない、でもやっぱり顔をみていきなりそう言われると悲しい。

そして、そこから

母は仕事において人間関係で失敗した。今まで第一線でずっと責任を持って働いていたにもかかわらず、部下に裏切られる形で退職せざるを得なくなってしまった。

母は落ち込んだ。初めての挫折だった。

東京でふらふらしていた私に、しょっちゅう電話がかかってくるようになった。それくらい母の心は弱っていた。
今なら、話が出来るかもしれない。

「東京においでよ、気晴らしにさ」

私から母に声を掛けるなんてこと、出来るはずがなかった。私の言葉はいつも母の耳には入っていなかったから「こうしたらどう?」とか「こうしようよ」という提案はいつもスルーされていた。

…そうね、そうしてみようかな

普通の親子だったら何気ない、普通の会話だ。
だけど私は、私と母の距離感が変わるのを感じた。母は、初めて私を一人の人として接してくれたのだ。21歳の時だった。

そこから私達は、長い長い時間をかけて少しずつ、沢山の話をした。
友達のこと、学校のこと、父のこと、おばあちゃんのこと、彼氏のこと、昔のこと、悲しかったこと、嫌だったこと、嬉しかったこと

もちろん途中で喧嘩も何回もした。何回も何回も何回もした。

一度だけ、どうしても許せなくて、互いに首を絞めたこともある。

それくらい親子関係をこじらせていたんだ。二人で泣きながら謝った。謝れてよかったとおもった、話ができて本当に良かったと思った。


長い長い時間がかかったけれど、反抗期だった時の自分に、今の状態を教えてあげたい。

大丈夫だったよ、お母さんは、また私を見てくれたよ。って


子どもが出来て今わかること

私は今、子どもたちの母親であり、父親であり、一家の大黒柱でもある。

色々あって、もうどうしても一人では生きていけなくなった時に、母が手を差し伸べてくれた。
あんたで失敗した事を、やりなおすわ

そう言って、子どもたちのお世話をすべて引き受けてくれることになった。
昔6歳までそうしてくれたように、3人の子どもたちに愛情を注いでくれている。ちなみに今は10歳までしっかり育てるらしい。

あらためて教育系の本を図書館から大量に借りてきて、毎日のように読み漁り、私で失敗したことを繰り返さないようにしているらしい。
堂々と目の間で「失敗作」と言われるのは、あまり気持ちのいいものではないけれど、それはそれで母なりの反省と愛情なのかな、と思う。


だけど、私は母親として、あの言われて嫌だった言葉の数々を、子どもたちに言ってしまわないか不安になる。

私の今の状態は、あの時の母とよく似ているから。

仕事ばかりで、子どもたちの話を聞ける時間が限られてしまっているから。

母親のあなたにお願いしたいこと

忙しいと思う、余裕もないと思う。でも、一日一回、少しでいいから子どもの話に耳を傾けて欲しい。
小学生の男の子なんて本当に「だからなに?」っていう話しかしてくれないけれど、でも「母親が興味をもってくれた」という事実だけで喜べるから。


余談だけど先日なんて、朝の一番忙しい時間に真面目な顔して
一つだけ言いたいことがあるんだけど…
っていうから、何?って正座したら


カッパって川にいて人を引きずり込んで尻子玉抜くんだって…!!
ですよ。本当に小学生男子いみわからない。


こんな自由勝手で気ままな子どもたちだけど、できれば褒めて欲しい。認めてあげて欲しい。居てくれてよかったと言って欲しい。そして、抱きしめてあげて欲しい。できれば、大好きだよと伝えてあげて欲しい。

私が欲しかったすべてを、子どもたちに与えて欲しい。
そうすればきっと、いつかの力になるから。

私も、がんばるよ。

著者の村上 奈美さんに人生相談を申込む

著者の村上 奈美さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。