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14/2/2

【第5ステージ ヨーロッパに憧れた理由】無名の大学生が「スポンサーを集めて自転車で西ヨーロッパを一周する」という夢を実現した話

Image by Olia Gozha

ヨーロッパに憧れた理由


ぼくがロードバイクに出会ったのは、高校1年生の夏。9つ上の兄がテレビで「ツール・ド・フランス」を見ていて、「面白いからお前も見ろよ」と言われたのがきっかけだった。

「ツール・ド・フランス」

それは毎年7月に開催される世界最高の自転車レースで、選手たちは23日間かけてフランスを一周する。毎年コースは変わるが、ピレネーとアルプスを含む、約3300kmの距離を走る。

「自転車で、一日に200kmも走れるの?」

衝撃的なことだった。ぼくは夏休みが終わると、持っていたママチャリで、追浜高校まで自転車で行ってみようと思い立った。最寄駅の京急久里浜から高校のある追浜までは、電車で10駅分、距離にして約15kmだ。

それまで、自転車でそんなに長い距離を走ったことがなく、いったいどのくらい時間がかかるのか、わからなかった。遅刻したくなかったから、朝6時半に家を出た。「1時間半?もしかしたらもっとかかるかな」なんて思っていたけど、実際にやってみたら、45分で学校まで着いてしまい、驚いた。やったことのないことに対する人間の想像や予想がいかに的外れなものか、そのときよくわかった。

「電車を使って行くより、早いじゃん・・・」

そう、家から駅まで離れていたので、電車を使っても学校までは50分かかった。その日から、ぼくは自転車通学を始めた。毎日往復30kmを自転車で走り、校長先生からも「君が自転車の子か」と覚えられた。10駅も離れた場所から自転車通学をする生徒なんて他にいない。ももが太くなり、1年間で50メートル走のタイムが1秒近く速くなった。

そのうち、ロードバイクを買って、家から学校まで30分で着くようになった。渋滞も関係なく、風のようにすいすいと進む自転車通学は、なんともいえない爽快感があった。


「いつかヨーロッパを自転車で走りたい」

ブドウ畑や中世の町並み、アルプスの美しい山岳風景・・・。初めてツール・ド・フランスの映像を見たときから、ぼくはヨーロッパの大地に憧れを持った。

「いつかヨーロッパを自転車で走りたい」

その想いは、高1のときからあった。でも、実現できるのは、ずっと大人になってからだと思っていた。


それが、ぐっと現実味を帯びたのが、2010年1月31日のことだった。就職活動中だったぼくは、「何か参考になるかもよ」と、兄に誘われて社会人が集まる交流会に参加した。そこで、佐藤伝さん(愛称は伝ちゃん)という著者の方と話したのがきっかけだった。

伝ちゃんは、世界各地に知り合いを持っているという方だったので、ぼくは軽い気持ちで言った。

中村洋太「伝ちゃん、ぼくはいつか、ヨーロッパを自転車で走りたいと思っています。現地にどなたかお知り合いの方がいたら、紹介してください」

伝ちゃん「へー!いいよ。それより、いつ行こうと思ってるの?」

中村洋太「社会人になって、お金が貯まったら、行こうと思っています」

伝ちゃん「いや、それじゃダメだ」

中村洋太「え?」


続くひと言に、さらに衝撃を受けた。

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