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14/2/14

夫婦別姓に鋭意チャレンジ中 ~第2話・アメリカ大使館での戦い編~

Image by Olia Gozha

ニューヨーク転勤に伴うアメリカ大使館での仁義なき戦いについて書く前に、わたしのハイブリッドパスポートについて少し触れておこう。


ハイブリッドパスポートへの道

パスポート更新は、夫婦別姓の最初の関門である。

わたしの場合はその関門が結婚半年後にやってきた。

なんとか旧姓を維持できないだろうかと調べてみたら、おすすめはされていないが、できないことはないらしい。

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Q16.結婚して姓が変わりました。旧姓を旅券に記載することは可能ですか?

A.できません。ただし、例外的に併記することが可能な場合があります。

 パスポートの氏名は戸籍に記載されている氏名でなければいけませんので、結婚や養子縁組により姓が変わった場合は、改姓後の氏名でパスポートを作成する必要があります。ただし、外国で旧姓での活動実績があり、旧姓表記でないと支障が生じる場合など、渡航にあたり旧姓などの別名も併記する必要がある場合は、その必要性が確認できる書類等を提出していただき、審査の結果、これが認められる場合には、別名併記が可能です(この場合は姓の後に括弧書きで表記されます。なお、この場合、別名併記はあくまでも例外的な措置であるため、ICチップには記録されません。)。詳しくは、各都道府県の申請窓口へご確認ください。

(外務省ウェブサイトより抜粋)

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わたしの会社は仕事での旧姓使用を認めてくれていたし、この頃は海外出張もよくあったので、さらっと会社で書類を作って、無事、新姓と旧姓、両方が入った「ハイブリッドパスポート」(勝手に命名)を手に入れたのであった。 

(ここの「旧姓使用証明書」という書類を使った。ご参考まで) 


これで以後10年間は旧姓併記の身分証明書が維持できることになった。わーい。

…あ、その前に離婚で新姓を失わないように努力します…

アメリカ大使館での仁義なき戦い

その後、さらに半年くらい経って、わたしがニューヨークに転勤することになった。

夫はフリーランスの美術系の職人さんなので、もちろん一緒に行くことにした。


アメリカ滞在のためにはビザが必要である。

ニューヨークでも旧姓を使いたいので、すべての書類のミドルネーム欄にばっちり旧姓を記入した。普段はぐうたらしているのに、こういうところの徹底っぷりは、変なところにこだわる性格だなあと我ながら苦笑せざるを得ない。


ビザ申請には、アメリカ大使館に出向いて、書類を提出するとともに面接をしないといけない。

「面接」という言葉にちょっと緊張しながら赴いたのだが、面接と言っても個室に呼び出されるわけではなくて、200人は入るだろうかという大きくて殺風景な部屋の隅に、8つくらいカウンターが並んでいて、どうやらそこで立ったまま話をしておしまいらしい。

待つこと2時間ほど。番号が呼ばれたカウンターは、感じのいい40代くらいのイケメン紳士の担当である。

ラッキー!わたしはビザへの旧姓併記について切り出した。

わたし「もしできたら仕事で旧姓使うのでVISAにも入れてほしいなー(英語)」

イケメン紳士「わかった!パスポート通りなら問題ないからやってみるよ!(英語、親指を立てる)」

イケメン紳士「カタカタカタ…(システムになにやら入力中)」

イケメン紳士「あれ?システムに括弧が入らないなー。ちょっと聞いてくるね(英語)」

そう言い残して、イケメン紳士は奥に引っ込んでしまった。


説明しよう。ハイブリッドパスポート上のわたしの名前は、

Last name:新姓 (旧姓)

First name:名前

というフォーマットになっている。


ちょっと分りづらいので具体的に書こう。新姓が「Shinsei」で、旧姓が「Kyusei」だとしたら、

Last name:Shinsei (Kyusei)

First name:Hanako

というかんじで、旧姓は括弧ではさまれているのだ。

イケメン紳士はビザ上でも忠実に括弧まで表現しようとしてうまく行かなかったようだ。


ややあって、紳士と一緒に裏から出てきた日本人マダムが、目を吊り上げながら

マダム「これはだめなの(英語)」

とか紳士に言っているではないか。

う…雲行きが怪しい。

しかし旧姓併記はあたりまえの権利だと信じて疑わないわたしは、ビザが出ないでアメリカ行けないかも、という恐怖も忘れ(これ会社員としてどうなの、と自分でも思う)、果敢にも食い下がることにした。

わたし「仕事で旧姓つかうので、できたらミドルネームっぽく入れてもらえないですかーー(英語)」

マダム「戸籍は「新姓」なんですよね?(日本語)」

わたし「はい……(日本語)」

カンカンカンカーン。

ゴングが鳴り響き、マダムと新姓が勝利(?)に輝いた瞬間であった。

わたしを黙らせたマダムが裏に下がったあと、イケメン紳士が、

イケメン紳士「…だってさー。めんどくさいね。ごめんね(英語)」

とあくまでも優しく、お悔やみの言葉を述べられた。

くそー戸籍がなんだよーーー!!

ほとんど使わないくせにーー!!

住所皇居とかでも登録できるくせにーーー!!!ムキーーーー!!!!!

日本語で戸籍制度を引き合いに出されて、ぐうの音も出なかったわたしは心の中で負け犬の遠吠えをするしかなかった。


一応マダムの名誉のために述べておくと、

AKA:Hanako Kyusei

と旧姓の氏名も、ビザのはじっこにちっちゃい文字で入れてくれた。

(AKA=Also Known As=別名、という意味)


この話を友人にしたら、

「AKAとか、ラッパーっぽいね」

という、褒めてるんだか、笑われてるんだか、よくわからないコメントをもらったのであった。


◆◆◆

長くなりましたが、この話はここまで。

次回はニューヨーク転勤後の夫婦別姓チャレンジについて書くつもりでいます!

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