精神科看護師として働いていた時の衝撃的事件簿⑨あの先輩看護師と患者さんとの関係性だったからできたことでもあるけど、俺は怖くて出来ないなって話。
当時働いていた病院は築23年だったので時々「ここは野戦病院か?」と思う事件が起きる。
ある日曜日、勤務に行ったら事務から「改修工事のため全館昼から2時間停電します」といきなり放送が入った。
「おいおい聞いてねーぞ!」と思いつつも、お昼過ぎに処置室で患者の足浴してる最中突然停電して真っ暗になった。
「病院でしかもオートロックの保護室とかもあるのに、停電って大丈夫かよ!」ってびびりました。
窓のある部屋は良いけど、詰所内は真っ暗。
仕方ないので懐中電灯を固定しながら記録を書いた。
トイレも女性の方は窓がないので採光出来ず、懐中電灯を固定したりした。
一番困ったのは保護室のトイレ。
流す時室外から電動のボタンで流すようになってるため、完全に動かなくなってしまったのだ。
なので一回一回バケツで流しから水を汲んでトイレを流した。
以前も書いたが、保護室は一般病院で言うICUみたいなもので、周りから隔絶した環境下だから守られる自我や安心もあるわけで、それがオートロックされずフリーってことで患者さんに結構な不安を与えてしまっていた。
そんな感じで昼なのに電気が使えず薄暗い病院は、もはや野戦病院と化していた。
しかし、ほんの1、2ヶ月ほど前も改修工事のため水道が全く使えなくなっていた。
そん時は大変だった。
トイレの水が流せないので風呂場に水を貯めて、一回一回汲んでは流していた。
ちょっと時間が空けば異臭がトイレを充満する。
それが廊下まで漂ってもくる。
そうなるともはや病院じゃない。
医療器具のあるただのキャンプ場だ。
しかも土日の人の少ない日にその状態だったので、看護師も助手さんも大忙し。
みなさんお疲れ様っす。
けど、過去一番「ここは病院か?」と思った事件はもっとすごかった。
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ある夜勤の日、事務から「そちらの階から水漏れしてるみたいですが、確かめて下さい」と連絡があった。
一通り水場を確認するが、異常はない。
しかし、どこからか水の勢い良く流れる音だけが聞こえてた。
最後に水道管の入ってるパネルを開くと、上から凄い勢いで水が降っていた。
どう言う訳か水道管が破裂したようだ。
「おっさんめー、なんでも悪いことはうちのせいにしやがってー。」と思いながら事務に報告すると、
「下の階が大変なことになってます!!今すぐ手伝いに行ってください!」と言って来た。
時間はすでに夜中3時過ぎ。同僚に一言伝え何事かと思いながら下のフロアに行く。
すると・・・
廊下は海だった。
いや、ありえねーから!
わけわかんねー、なんで膝下まで水がはってんのよ?
え?!ここどこ??病院??ていうか日本???
あまりの状況に軽くパニック。
例えるなら、病院の廊下でドラえもんのどこでもドアを開いたら海とつながっていて海水が多量に流れこんでしまったような感じだった。
よくみると、真っ暗な中で、各階から来た応援のスタッフが一生懸命バケツで水かきしてる。
しかし、やれどもやれども水は減らない。
こんな時一番便利なのはモップでも雑巾でもなく、まさかのちりとりだった。
水はどうやら水道管の走っている廊下の一番奥の検査室内から流れていたが、鍵がないのでだれも扉を開けられない。
いや、むしろ中のことを想像すると開けたくない。
なので全員一致で扉の隙間を塞いで、後は日中他の人に任せることにした。
ちなみに次の日検査課の人が扉開けたら水が溢れだしただけでなく、中にあった検査用紙は全滅し、機械も全て整備に出す大惨になってたそうだ。
黙々と廊下を掃除していると、途中からその日夜勤の相方が「詰所は患者さんに留守番任せて私も手伝いに来たわ」と来たのにはまじでびびった。
ここは精神科だ。
詰め所内にはナイフやハサミなどの危険物だけでなく、抗精神薬や抗不安薬、各種睡眠導入剤や強力な鎮静剤も多量にある。
それ以外にも患者さんから預かっている私物や貴重品もある。
そのため、鍵の管理や物品の管理、患者さんの入退室にも注意を向けるよう日頃から主任に厳しく言われている。
「いや、詰所空けてどうすんの?てか、患者さんに任せてってのはやばいでしょ!!」と思ったが、当時1年目だったのでベテランのその人には何も言えんかった。
一段落して戻ると確かに患者さんが留守番していて「あ、おかえり~、他の人には詰め所の外で待っててもらってたわよ~」と微笑みながら待っていた。
今思うとこれは、まじでありえねー。
この時のベテランの先輩が退職された後、主任にこの時の体験を話したら、たばこを吸いながら絶句していた。
終わった時間を見るとすでに朝の5時を回っていた。
あの時つくづく思ったもんだ。
精神科病院の夜勤って本当に何が起こるかわっかんねー!
そんなこんなで、俺は明日も明後日も何が起こるかわからない野戦病院(?)に行くのであった。
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