ミスターマリックとなぜ僕が戦うことになったのか(第一章 ~出会い~)
あれは確か2000年の秋ごろだった。その時の僕と言えば、しばらくイリュージョン業界から距離を置いていたため、技のキレが著しく衰えていたんだ。
「イリュージョン」
言葉にすると派手なイメージがあるが、完成するまでの道は地味と表現せざるを得ない。
一番大事なのはテクニックではなく想像力なんだ。
自分の場合、ネタを考えるのには主に2パターンある。
第一には図鑑を並べること。
特に道具系の図鑑を見て、「物」から発想する。
例えば、図鑑に電子レンジがあったとする。
人間は電子レンジイコール温めるもの、という発想を生きてきた常識の中で必然的にする訳であるが、逆の創造を意図的にしてみる訳である。
「電子レンジの中に入れてタイマーを回すと何かが凍るというのは驚かれるか?」といった具合である。
全てのアイテムに対し、2~3案のネタを無理やり考え、そこからさらに深堀していくのが自分のやり方である。
そしてもう一つのやり方は、散策である。
街に出ていろいろな物を見たり触れたり聞いたり匂ったりすることで五感を研ぎ澄ませていくのである。
そうすることでネタが急に脳裡に湧いてくることがたまにあるのである。
また、図鑑を見るのに近いが、東急ハンズ等の道具とか部品などが大量に置かれた場所に行って、アイテムに見て触れることでアイデアを創出させるのである。
ある時、渋谷のハンズに行った僕はネジ売り場に行ったのだった。細かくネジやナットを見ていく際に、唯一一つだけ残っていた太目のネジに目が行った。
気になって取ろうとした時、後ろから手が伸びてきて、ほぼ同時に同じネジに触れたのだった。
後ろを振り返るとサングラスをしていないおじさんがにこやかにほほ笑んでいた。
これが松尾さん、失礼、本名で書いてしまったが、マリックさんとの出会いであった。
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