定時制卒が帝六の博士さまに娶られた話 その2 ~純朴と真面目と偽りのマッチングシート〜
その1で結婚相談所に入った私ですがその時29歳。
考えてみると定時制高校を卒業して丸10年です。その間におつきあいした人は全くおりません(笑)
2年フリーター、5年学校、3年勤務のその間は今思うと嵐のように忙しく、恋がしたいと思ってもそんな時間も心の余裕もなかったのでした(笑)
唯一おつきあいと呼べるのは高校時代3か月だけ清く正しい高校生らしい(笑)お付き合いした元彼くらいでしょうか?
まあそんな人間ですからお見合いもそう簡単にいくまいと思っていたのですが・・・・
本当にそう簡単にいきませんでした(笑)
まずは先生から髪型や服装の指導、10年以上も男日照り続いているとクロゼットの中は黒系の仕事用の服しかありません(笑)
まずはおしゃれ服を買うこと、化粧や髪型から始まりました。(キャバ服はさすがにもう廃棄済み)
そして「本当はどんなタイプの人が好きなのか」「どんな結婚生活をしたいのか」などの結婚についてのカウンセリングを受けました。といっても堅苦しくなくお茶を飲みながらお話をする感じでした。
結果、分かったことは
「私は自分の仕事が好きだから相手も持っている仕事が好きな人でいてほしい」
「両親の不仲や家庭での育ちで私は尊重されなかったことが多かった。だから私を尊重し、かつ自分の意見を大事にする人がいい」
「愛情は消えても尊敬は消えないから尊敬できる人がいい」
「自分は友達が少ないから少なくとも信頼できる友達がいる人がいい」
「すごく学歴コンプレックスがあるのでそれを刺激しないでくれる人がいい」
「家事スキルはあればいいけどなくてもいい。台所にあんまり入ってほしくない」
「食べることが好きな人がいい」
「物を大事にする人がいい」
「お金はなくても節約技術が自分はある(家事など)からお金を大事に無駄に使わなければ高収入でなくていい」
「タバコとギャンブルはお金の天敵だからしない人がいい。お酒は自分が好きだから少しは飲めるとうれしい」
「両親から殴られたり蹴られたりしたからそういうことをしない人がいい」
二人で話してみると最初は靄がかかったような自分が結婚したい相手像が少しずつ分かってきはじめました。
先生に勧められ写真スタジオで撮ってもらったお見合い写真は本当によく撮れ、「別人」と言われるほどでした(笑)
「29歳のいい思い出になった!これだけでも入会した価値があったかも!」なんて思うくらいいい写真で今でも何かあるとその写真を使います(笑)
勝負服もそろい、結婚したい相手像が見えてきて、写真も撮った。マッチングシートも送り、お見合いサイトに登録が完了しました。
あとは自分からいいな・・・と思う人に仲人型専用のお見合いサイトからお見合いを申し込んでみたり申し込まれたりするだけです。
そこでお互いの合意が付いたら本当に会う(お見合い)をします。
色々見ながら自己紹介文に「友人が一番の宝です!」と書いていた人にさっそくお見合いを申し込みましたが、さっそく撃沈。
さっそくの撃沈にやさぐれましたが、わりとすぐに今度はお見合いの申し込みがありました。
今度の人はなんだか変わってる・・・?写真がどーみても・・・証明写真??
こういった場所では結構写真は重要なのですがそれが証明写真。真面目なんだか不真面目なんだかわかりませんが面白い人だな、と思いました。
学歴も「大学院卒」。このサイトでは「国立大・私大・大学」で分けられていたので大学ということはそんなに学歴コンプレックスを刺激する人ではないかな?と思いました。最近では文系理系関わらす院卒の修士は珍しくありませんし。
年は3つほど上で職業は団体職員、隣の県にお勤め、年収450万程度。おお、ちょっと希望の年収より高いけどすごく高いわけではないから私の貧乏性(笑)も嫌うまい。
何より自己紹介文が良かったのです。
『小さい頃よりアトピーで悩んだ時期もありましたが、家族の協力や良い友人たちに恵まれてきました。今は仕事でもまだまだ未熟なので仕事に打ち込む日々ですが、結婚したら時間を取りお互い思いやりが持てる家族を作りたいと思います。』
読んだ瞬間、何とも言えない柔らかな気持ちになりました。
こういう自分をどう高くアピールするかをする場所であえて自分の病気のことを書く勇気、そして家族や友人への感謝の言葉。すごいなと思いました。潔いとも思いました。
そしてその言葉の裏にはきっとイジメや苦しい思いもあったのでしょう。それを乗り越えてきたからの言葉に私は感じました。
私は医療者ですから多少の病気など気にしませんし、むしろ何か力になれたらいいなと思いました。
また「まだまだ未熟だから仕事に打ち込む」なんてすごく真面目だし、仕事が好きなことも感じ取れ、それがまた素敵に思えました。
唯一気になったのが初婚なのに「再婚可・子連れ可」だったことでしょうか。実は隠し子とかいるのか~~(笑)なんて思いながらこの人とのお見合いを了承しました。(後で聞くと間口を広げるための策だったそうです)
一週間後、お見合いで有名な某ホテルの喫茶室で会うことになりました。
私は初めてのお見合いで頑張って自分で髪をセットしたら大失敗。
付き添いに来てくれた相談所の先生に「頑張りすぎもダメよ~」と窘められる始末(笑)やはり使い慣れてない美容機器やワックスなんかつかうもんではありません(笑)
慌てて先生が櫛で髪を整えてくれて結局はいつもの髪型に(笑)
そして待ち合わせの喫茶室の前に小柄なその人はおりました。
思いっきり黒のビジネススーツ(後で分かった年に数回使う学会用)、資料でパンパンのビジネスバック。磨かれてないビジネスシューズ。髪もいつも通りと思われる普通の髪型。
先ほどもちょっと書きましたが結構私の入った結婚相談所ではお見合いの服装も気にします。そこで男性が言われているのが「ビジネススーツにパンパンのビジネスバックはダメですよ!自然体もいいけど初対面くらい格好つけましょう!」ということを言われます。彼の格好はまさに地雷、地雷全て踏み抜き!
私は思わずおかしくって下を向いて小さく噴出してしまいました。先生もあまりに自然体な彼に苦笑いです。(なおこの写真を見つけて笑ってしまいました。加齢ゾーンありましたf^_^;)
でもそれは気が付かなかったようで、私たちに気が付いた時の満面の笑みはまるで少年のようでした。
先生から名前の紹介を受け、後は二人でお茶にすることに。
「どうぞなんでも好きなものを選んでください。自分おごりますから!」
彼は子供のような顔と表情でメニューを見せてくれました。
なんだろう、かっこを付けないこの少年みたいな純朴そうな人・・・面白すぎるじゃないか!
30代半ばでそれはまずいだろうと思う気持ちと、ずっと仕事一筋でどう女性と付き合えばいいのかわからない彼が一生懸命おもてなしをしてくれる。
もうちょっと素敵なエスコートを望んでいたけど、これも悪くないな・・・むしろ好きかもしれないな・・・
そんなことを思いながら紅茶を頼むと「いや、ケーキセットにしましょう!自分はショートケーキ頼みます!Kaoさんはどれがいいですか?」
男らしいというかお前が食べたいだけやんけーー!!という突込みと、でもそれを私にも勧めてくれるその純朴さがもう面白くてたまらない。
『もしかしたらこの人好きになってしまうかもしれない。自分男の人苦手なのにな・・・』
そんな気がうっすらしてきました。
さて注文。もちろん大声で店員さんを呼びとめようとするので「こういう風な場所では手を挙げるだけで十分ですよ」というと「そうなんだ。教えてくれてありがとうございます。ちょっとこういうところ慣れてなくて・・・」と顔を赤らめます。
かわいいやんけ、かわいいやんけ、にーちゃんえろうかわいいやんけ!!(笑)
しかも分からないことはすぐ謝れるなんてすごいな、と思いました。年下の女なのに。
なんだかそれだけで人間性が分かるような気がしました。
しかしケーキセットが来たり、普通の時候の挨拶が来たら途端に彼は口が重くなってしまいました。
もともと話すのが苦手な様子。そのうえ、わざと手を隠したりしてアトピーを見せないようにします。
ああ、この人はやっぱりこの事を気にしているのだな、と思うとイジメでつらかった時の気持ちが湧き上がってきます。
こういう時、後から言うより先にこの話題はふってしまった方がいい。ここは医療者的に明るく皮膚のことを話題にしました。
「アトピーなんですってね、かゆみとかどうですか?」
「かゆみはほとんどないんです。ただ皮膚が落ちるのがひどくて・・・」
「皮膚が落ちるのは髪の毛落ちると一緒だからあんまり気にしない方がいいですよ。私も髪長いし、おんなじですね。」
そう笑うと彼はちょっと驚いたような顔をしてそれから笑ってくれました。
「そういう風に言ってもらえたの初めてです・・・」
その後、彼の仕事のことをゆっくり聞いていくと理系の研究職であることが判明。しかも現場が多く普段は作業服で通勤していて職場に女性がほとんどいないことなどもわかりました。
そりゃ女性慣れしてないことにもこういう場所に慣れていないのも納得でした。
仕事のことも聞きたいのですが説明が難しいらしく、また素人に話したことがないからどう話せばいいのか分からず難儀している様子でした。
でもできるだけわかりやすくゆっくりと話してくれるその姿勢はとても誠意があり素敵だったのです。
そして私の仕事に話が来た時のことです。
実は私は仕事中毒者。
仕事の話を振られたとき、最初は普通に話していたのですが途中から思いがあふれてマシンガントーク炸裂!
やってはいけない、絶対今日気をつけなきゃ・・・と思ったことをやってしまったのです。大体このマシンガントークで相手を引かせ、特に男性にはよく思われたことがありません。
『ああ~~~!!せっかくいい人でちょっと自分は好きになりかけているのにやらかした!大失敗だ!!もう終わりだ!!!』
そう思って内心頭を抱えていたら彼は少し引いたのかもしれませんが、それを感じさせない笑顔で私の手を握ってくれました。
「仕事に情熱があるのって素晴らしいし自分はいいことだと思います。そんなKaoさんを支えられたら嬉しいです。」
あ~~~負けたって思いました。
もう、この人には一生かなわないな。そんな大きな人だ。
でもこんな人に会えてよかった、嬉しかったなと思いました。
たとえ結婚しなくてもこんな素敵な人に会えたこと、尊敬できる人に会えたこと。
それだけが嬉しかったです。
その後、彼の提案で庭を見に行き(笑)窓際のカップルを驚かせてしまったり(すいません)しながら初日は終了。
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