トルコ半周の旅に出たら友人が男にモテまくった話
しかし、だ。
いつまで経っても高橋だけが出てこない。どういうことだ。我々と高橋は同じタイミングで更衣室に入り、ほぼ同じタイミングで用意をしたはずだ。
確かに私の方が高橋よりも速く準備を終わったが、私が寝そべってからもう10分は経とうとしている。
そして、私はここでやっと、高橋がトルコ人男性から異常なまでの好意を示されていたことを思い出す。
あれだけ高橋のゲイ話で盛り上がっていた我々だが、『遠い異国の地での垢すりマッサージ』にドキドキ・ワクワクしていた私は、ここ1時間くらい高橋の謎のセックスアピールのことを意識せずに過ごしていたのだ。
ジーンズにダウンジャケットという姿でもトルコ人男性を魅了し続けてきた高橋だ。
裸にタオル1枚なんて刺激的すぎるだろ!それにこの店のマッサージ師、みんなマッチョな身体にワイルドなヒゲ面だ、やばい匂いしかしない!
と思ってたら、遠くの方から声が聞こえてきた。
イヤッ!キャハハンッ!アーッ!ヤメテ!!
・・・間違いない。高橋だ。高橋の悶絶と絶叫が入り混じった声だ。
何が、彼にこれほどまでに淫らな声を発させたというのか?恐る恐る声のする方を見てみたら、
3人の屈強なマッチョマンたちに乳首をこちょこちょされている高橋の姿がそこにあった。
高橋が失った大事なもの
その後の旅の記憶はない。確かそのまま女性陣と合流し、イスタンブール空港に向かい、飛行機に乗って日本に帰ってきた。それだけだ。
帰りの飛行機の中では、トルコ人に乳首責めをされた高橋の絶叫が断末魔の叫びのように鳴り響いていた。
余談だが、その後、寝そべってマッサージ開始を待つ我々の横で、3人のトルコ人マッサージ師は『高橋争奪戦』となる話し合いを繰り広げていた。
また、高橋はハマムにおいて、我々よりも長時間マッサージを受け、高額なチップと有料延長をガチなテンションで要求された我々を尻目に、彼は『無料でやってあげるから延長してくれ!』と懇願されていた。
結果的に彼はこの旅で、我々よりも多くの飯を食い、長い時間マッサージを受け、誰よりも多く現地の方とコミュニケーションを取ったという点で旅を満喫していたかもしれない。
しかし、そんな彼は人知れず大切なモノをトルコ旅行中に失っていたのだった。
冒頭で『我々のゼミは男女の壁がなく、一緒に旅行をしても男女関係のもつれに発展しない』と述べていたが、そう思っていたのは私だけだったようだ。
私が大学を卒業して、社会人になり、ホワイト企業に絶望し退職を決意し始めた頃、高橋が一緒にトルコ旅行に行った女の子のうちの1人に前々から淡い恋心を抱いていたことを偶然知った。
遠い異国の地で1週間ほど、好きな女の子と共に旅行をする。
高橋の心の中にも特別な感情があったことだろう。異国情緒溢れる冬のトルコはとても美しく、日本では味わえないロマンチックな景色を見ることもできた。1週間寝食を共にすることで、普段とは違う男らしい頼れる姿を見せることもできたことだろう。
この旅をキッカケに、今まで誰にも言えなかった恋を発展させることだってできたのだ。
しかし、残念ながら、高橋が人知れず思いを寄せていた女の子の中で高橋のイメージは、『トルコでやたら男にモテて、ハマムで乳首をイジられた男』という何とも情けないものに固定されてしまったのだ。
そして、彼は1つの恋を失ったと同時に、人生で3度訪れるという貴重な『モテキ』の残機を1つトルコで失ってしまった。
彼が求める性別ではないにせよ、短期間であれほどまでに多くの人に好意を寄せられ誘惑される経験はなかなかないだろう。
彼は成田に降り立った後、ボソッとこう言っていた。
『俺、人生に躓いたらトルコに行くわ。あそこなら、なんとか生きていける・・・』
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
高橋は今でも仲の良い友人です。
僕は普段、ライフスタイルデザインとかビジネス・起業・副業なんかのメッセージを発信していますが、世間がゴールデンウィークということで、『旅』に関する印象的な話を書いてみました。
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