大学院卒業間際のニートがカリブ海で絶望に打ちひしがれながらも、得たかけがえのない話。
なんといってもここは楽園。目もくらむほどの摩天楼、目を回すほどの人ごみ。そんなものが同じ世界に存在していることを忘却してしまうほどの世界だった。
この世界に永遠に居続けることができたら、どれだけ素晴らしいだろう。
真上に上がる白色の太陽が、深く肩を落とす俺をジリジリと照らしつけている。
どこを見ても日本とは違って、どこ見ても日本の気配がしないこの国で、完全な孤独をあじわっているのだ。
俺は一体何をしにケイマンに来たのだ、と心の声は問う。
7人のケイマン人を探す旅に出ておるのだ。
日本から出立する成田空港で俺は胸を張ってい得ただろう。
もう一度問う。俺は一体何しにここに来たのだ?
たったひとりのケイマン人だけでも会いたい。
幼い子供たちが嬉しそうにバーのプールで遊んでいる。バーの中では誰も彼もがニコニコと笑っていた。
たった一人を除いては。
メニューが読めない。おしゃべりがわからない。目的達成への方法がわからない。
ナイナイづくしでやってきたケイマン。英語が喋れない、聞けないというだけで娯楽の楽園からははじかれてしまっている。
ケイマンでは、英語をしゃべる人間がサービスを受けることができる。と俺は思ってしまったのだ。
これがハワイだと話が変わる。オアフ島だと金を落とす人種は必然的に日本人であるから、サービスを受ける人間が日本語をしゃべるとなると、日本語でも通じる。
ケイマンの場合は、それが英語なのだ。
恥ずかしながら、英語ができない。それだけで多くの情報が根絶してしまう。
そんなものは火を見るよりも明らかだ。
英語が喋れないだけで、ケイマンにおけるサービスを受けることができない。
あまりの解読不可能な情報が多く流れ、それから避けるように行動していた俺は、晩に悔しい思いをしながら就寝した。そしてその時考えた。
ときに、目的を捨てることも必要なのではないだろうか?
ほかの人からはよく真面目だと言われる。
自分自身そう思っちゃいない。
トライもしないで目的を諦めるのか?
努力が足りないんじゃないのか?
多分どちらにも当てはまると思うし、実際そうだと思う。
しかし、それと同時に、この目的は自分一人のものでもある。会おうが会わまいが、誰も困らないし、雇われているわけでもない。
ではまず滅多に来れないカリブに来て生真面目にベットの上でうんうんうなっている自分がバカらしく思えてきた。
これだけ素晴らしい景色が広がっているのに自分の中に閉じこもっていてはもったいない!
翌日からは、一度目的を忘れ、ケイマン諸島を楽しむことにした。
クズの誕生である。
クズは普段付けないグラサンとカリビアンシャツを装備した!!
もうこれで英語で話しかけられたら頷くだけで、動揺を隠せるぞ!!やったね。
あと、これは結果的よかったようで、ケイマンの人々は観光客に非常に優しい。
なぜなら、彼らがお金を落としてくれることで、この島の経済は潤っているのだから。
国によっては、観光客であることを隠すべきだと言われている。
でも今回は、観光客である事をアピールすると普段優しいケイマンの人々が輪をかけて優しくしてくれる。
これでようやく俺は、今まで見えていなかったケイマン諸島の様子を、感じることができたのである。
目的忘れないとわからないとか最低のクズだね!
①ケイマン諸島の鍵、豪華客船
ケイマン諸島にはカリブ海クルーズと称して豪華客船が来るのは前の記事でも書いたが、これが来るのと来ないのでは、圧倒的な差がある。
例えば、豪華客船が、来るとき
アハハハハ
来ないとき
シーン・・・・
5〇〇の蓬〇♪
うん。これはホントに驚いたね。ホストマザーによると、豪華客船が同時に5隻くるとほんともうテンヤワンヤらしい。逆に1隻も来ないときはお店のシャッターがしまってるんだそうだ。
ちなみにこれ、首都の目貫き通りです。時間は大体昼の12時くらいかな。
豪華客船乗っている日本人にあって話したけど、クルーズの旅は島が違っても同じような免税店回るから島の違いがあまりわからないらしい。
ローカルのこと知りたいならひとところにとどまってないと見えてこないことだなと思った。
ちなみに客船が来ても、夕方の3時か4時ころには客船の人が帰ってしまうので、首都のジョージタウンのシャッターがガラガラと締まり出すのはその時間帯である。
まだ日が昇っているのになぁ。
②観光地でお金をかけると言う事
やっぱり今回の旅で一番かけていたことは、「お金をかける」ということ。
お金をかけたら、イルカとも戯れることもできるし、エイと一緒に泳ぐこともできる。(エイってしっぽの根元にでっかい刺持ってるからおっかないんだぜ!)
前半は本当に目的のみにフォーカスを当てすぎて考えもよらなかったが、その土地でしかできないことにお金を使うことって無駄使いじゃないと思う。
日本では体験できないことを体験しに行ってんだから、貧乏な旅もいいかもしれないけど、お金をかけない旅じゃなくて、どこにお金をかけて、どこにお金をかけないべきかってのは、一度考えるべきであると思う。
③グローバル化の本当の意味
昨今、企業の人たちがグローバル化が鍵である、とか我社にグローバル化が・・・
という風な話が多いのだが、それまで俺は、グローバル化は英語がしゃべれて、外国人とコミュニケーションがとれる。
それぐらいしか捉えていなかった。
だが、ケイマンに来てその認識は浅すぎたことを感じた。
クルーズの日本人に聞いた話だが、北と南で島の呼び方が変わる島があるらしい。
北側はフランス領サンマルタン、南側はオランダ領シントマルーティンとなっている。通貨も南北によって違う。言語ももちろん異なっており、さながら韓国と北朝鮮のようなイメージがわく。
しかし、聞くところによるとそうは言っても、形式上のもので両方の行き来は比較的簡単にできるのと、島全てを網羅できるのは、観光客がもつ、アメリカ、イギリス文化とアメリカドルである。
この島は、北と南に独自の文化を持ちながら、それを結びつけているのは、アメリカ、イギリスの文化であるという傍から見ると変わった島である。
しかし、これはこの島限定の話ではなく、カリブ海全体がそうと言える。
カリブ海における豪華客船が一つの島に与える影響は大きく、島独自の文化を持った上で、観光客が持ってくるアメリカの言語、文化、通貨が島々の共通のものとして持っているように感じた。
実際ケイマンでも、ホストマザーはイギリス人で、ケイマン歴が7年、アパートの上の階にいるのはポルトガル人で、地元の人間は別のところに住んでいる。ローカルの人々とともに、外国人も政府機関で働き、それこそ様々な文化的背景を持つ人々と一緒に暮らしていかなければならない。
そういった状況を考えたときに、自分自身の意見や思うところをしっかりと述べなければ、相手は全く違う世界に生きてきた人間なので、空気を読むことでコミュニケーションが測れるわけではない。
グローバル化、グローバルな人間になるということは、自分の何かを持った上で共通の文化を知り、その文化の中で、相手に伝えるべきことが伝えられる。ということだと学んだような気がした。
とは偉そうに書いてるけど、正直、7人のケイマン人に会えなかったし、ただ遊んで帰ってきましたってのが現状なのかもしれない。でも、そうであっても、カリブに来れたことによって学んだものもあるから、それを大切に考えながら日々過ごしていきたいと思った。
次に行けるのはいつだろうか・・・・・
著者の尾崎 裕真さんに人生相談を申込む
著者の尾崎 裕真さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます