たった一つの出来事で運命は変わる(絶望)

前話: たった一つの出来事で運命は変わる
次話: たった一つの出来事で運命は変わる(挫折)


顧問
卒業までこのようなことがないようにいたします
生徒指導
きちんと司君を卒業できるまで守ります


この言葉を信じて僕はまた練習をした。

しかし、現実はそう甘くはなかった。


6月僕は練習中に足に違和感を感じ、かかりつけの病院に行った。

先生、どうですか?ただの疲労ですよね?
医者
アキレス腱に炎症が起きています。しばらく練習は無理でしょう。


まあ長い選手生命、怪我の一つや二つは当たり前だろう。

もちろん無理はしてはいけないので僕は練習をせず、ボールを磨いたり、筋トレをしたりと足に負担をかけない練習をした。


この時これが災難を招くとは夢にも思わなかった…。


7月の夏期大会、甲子園への切符をつかむため、僕のいた高校はベスト16まで行ったが、惜しくも甲子園に出場できることはできなかった。

8月新チームになり、少しずつ走り込みができるようになり、遅れを取り戻そうと練習に励んでいたが、ある事件が起きてしまった。


とある練習の昼休み

部員1
なあ、司うざくね?
部員2
わかる、足が痛いからって練習しないとか意味わかんねー


教室内から聞こえた会話に一瞬耳を疑った。普段は仲良く話していた友達が僕の悪口を言っている。

廊下に聞こえるくらいの声だったが、何かの聞き間違いだろうと教室に向かおうとした瞬間、僕の後ろにいた友達もその会話を聞いていたのだろう。先に教室に入り

部員3
おい、廊下で司が聞いてるぞ


こう言ったのだろう。あれは聞き間違いなんかじゃなかった。


僕は陰で悪口を言われていたのだ。


もちろん足が痛くて練習を満足にできないのはわかっている。でもその分マネージャーと同じ仕事をしながら、できる限りのことはしていた。早くグラウンドで走れる日を僕は楽しみにしていたのだ。


その友達が僕が廊下で聞いていると言ったあと、他の友達が

部員4
おい!司がかわいそうだろー
部員5
悪口言うなよー


というわざとらしいフォローをいれ、最後に


ぎゃははははははは


と笑い声まであげていた。


そのときは仕方なく一人でお昼を食べたが、彼らの奇行は悪口だけでは止まらなかった。

とある練習日、いつも通りグラウンドにグローブとスパイクを置き、バットやボールなどを倉庫へ取りに行った。もちろんマネジャーと同じことをしている僕の仕事。何も言うことはない。


そしてグラウンドに戻った時、おかしな光景を見た。


グローブとスパイクがない


さっきまで置いておいたグローブとスパイクがなくなっている。みんな置く場所は決まっているから自分で動かさない限りなくなるなんてことはない。

おかしいぞと思いあたりを見回す。







……





………






…………あった





草むらに


ポケモンが出てくる草むらじゃない。

ましてや道具が歩くわけもない。


僕のグローブとスパイクは他の部員の手によって放り投げられていたのだ。

自分が最初に置いたところからかなり離れたところに。

ありえない。別に僕のことが嫌いならそれでいい。自分がうまくかわせばいいだけのこと。

でも、仮にも自分たちも使うグローブとスパイク。自分たちの手足となるグローブとスパイク。両親が多額のお金を出して買ってくれたグローブとスパイク。大事にしなくてはいけない物をどうしてこいつらは粗末に扱えるのだろうと純粋に思った。

もうここでは野球はできない。同時に思ってしまった。陰口も止まらない、監督も「被害妄想がすぎるんじゃないか」などと言う、もうここで野球はできないと両親に伝えても「やるって決めたのは自分だよ。逃げるの?」と言う。


もう僕の居場所はどこにもなかった


学校にも、グラウンドにも、家にも…。

ガシャン…。僕は夢を自分で割ることになったのだ。


泣きながら僕は両親に謝った。ひたすら謝った。

あまりにも追い込まれた僕は


自分なんか生きていても意味がないんじゃないか


そう思うようになっていった。

著者の渡邉 司さんに人生相談を申込む

続きのストーリーはこちら!

たった一つの出来事で運命は変わる(挫折)

著者の渡邉 司さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。