塀の中へ 9,escape 逃亡
9月30日
この日は金木先輩と朝からこの街へ向かう。別のお客様のところへ寄ってから、例のトルコライス屋へ行ってみる。
しばらく待っていたのだが、なんだか、閑散な感じ・・・
あきらめて別の店へ行く。
いったい、いつになったら食べられるのだろうか?
今日は13:00〜15:30のまでのオペレーション。
実際に受注されたリーフレットやここの刑務所のリーフレットを印刷してみる。
少し調整し出してみた印刷物を見て、ヒルマンさんや谷田さんはもとより、技官や刑務官まで感心してくれた。ただ、この印刷物に対して一番厳しい質問をくれたのは刑務官だった。
さすがに鋭い!!
スキャンの設定のためにパソコンを確認する。
さすが刑務所だけに、外部とのネットワークは遮断されているし、娯楽にまつわるソフトやデータなども削除されている。
セキュリティーも、外部からの攻撃などは一切ないが受刑者たちが悪用しないように、鍵がかけられており万全な体制が整えられている。
しかし、一台だけちゃんと設定されていないパソコンがあった。
これには、技官よりもヒルマンさんが怒っていた。
一瞬、どっちが技官かわからなくなった。
そうこうしているうちに、時間が来てしまう。
明日は、運動会ということでくれぐれもケガをしない様に二人に伝える。
受刑者がその日の作業を終了すると、工場内に設けられた洗い場で足や顔などを洗う。
制限時間は1分らしい。
その時にみなさんの背中や腕にそれは見事な刺青が覗く。
さすがに最近なかなかお目にかからないので、最初は驚いたがこの頃になると慣れていた。
そういう方は、一様に目付きが鋭いのだか中には本当に優しそうな表情で作業されている受刑者もいる。
人生いろいろ、受刑者もいろいろということか・・・
管理棟に戻り、根木技官、川口技官にお話をお伺いする。
前から聞いてみたかったことをぶつけてみた。
すっぽんぽんで逃げればわいせつ物なんとか罪だし、物を壊すと器物破損罪とかなんとかで捕まえるらしい。
社会の底辺で守られているセーフティーネット。
監視することによって彼らの命は守られている。
社会のルールを守れずここに来た人たち。
その人間たちを社会のルールで守っている。
彼らは逃げたいのか?
いったい何から逃げたいのか?
被害者よりも守られている事を彼らは分かっているのだろうか?
反面、必死に更生したいと頑張っている人もいる。
ちょっとしたボタンの掛け違いで、入ってしまった人もいるだろう。
今度こそは社会に戻って役に立ちたいと願っている人達もいる。
本当に難しい問題だと思う。
自分でも職場が一緒で住まいが一緒で、四六時中一緒に居させられたら、うんざりするだろう。
カミさんでもそんなに一緒にいられないと思う。
まして、そりが合わない人間だったら・・・
どこの会社でもあるような人事が、刑務所の中でも行われている。ところがこちらの場合はかなり感じが違うのだろう。
やはり刑務所というところ、色々と考えさせられる場所である・・・
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