塀の中へ 10,Income 収入
10月4日
この日で予定は最後の日。
一日いるという約束だったので、朝9:30からお伺いする。
さすがにこの頃になると外門の方にも顔を知られたらしく、素早く記帳するノートが出てくる。
気持ちがいいんだか、悪いんだかわからない・・・
管理棟で根木技官とおちあい、早速塀の中の印刷工場へ。
技官もとても嬉しそうだった。
工場に入ると谷田さんが待っていてくれた。
思わず拍手。ここの工場の団結力はすごいらしい。
今日は自分も作業工になったつもりで動く。
今年に入って坊主頭にしたので変に馴染んでいる。
根木技官からは「志願囚」とからかわれる。
しばらく作業をして休憩時間。
刑務作業はきっちりと休憩を取る。
彼らの時給は当初10円からスタートし上限は60円。
何も揉め事を起こさないとしても上限まで最低2年半はかかるらしい。
ただ、休憩時間や面会時間など勤務していない時間はきっちり差し引かれる。
働いた分は個人別で会計課が管理している。彼らはそまお金で日用品(シャンプー、歯磨、ティッシュなど)や本などを買うことができる。
トイレの紙もすべて自己負担。
そのお金を被害者へ賠償金を払うことも許されている。
月給+αで賞与もあるらしいがどのくらいもらえるかは一人ひとり違う。
複雑な計算で、出所時に渡されるとのこと。
丸5年入って約25万円ぐらいか。
賞与や差し入れの収入と日用品購入などの支出で、出入はあるがだいたい30万円ぐらいが手元に渡されるだろうか。
でもこの不景気な折、仕事も見つからず30万円ぐらいの金で何ヶ月生きて行けるのか?
もしかすると、塀の中に戻りたくなる人もいるのではないか?と心配になる。
休憩時間を工場内で過ごしても良かったのだが、技官のはからいで、所内にある職員用の休憩室に案内される。
職員用の自動販売機が設置され、横には取調室が並んでいる。
この日は、すべて空いていた。
休憩室内は、テレビと喫煙室があり労務関係のポスターも貼られている。
(ここも職場なんだな)と考える。
刑務官、技官の方は喫煙者が多い。
やはりストレスが溜まるのだろう。
値上げされたのにもかかわらず、やめようと考えている人はいないらしい。
私は数年前に禁煙し、体調もすごくよくなった。
禁煙してよかったと言う話をしてみるが、全く効果がなかった。。。
受刑者はもちろん禁煙、禁酒だ。
技官達と話をしていると、印刷工場の刑務官が缶コーヒーをおごってくれた。
離れたところで、かなり気を使ってくれていたようだ。感謝である。
でも、笑顔はなかったが・・・
休憩が終わり、工場へ戻ってお礼を言った。
刑務官は、敬礼をしながら受刑者たちの点呼に向かって行った。
著者の村瀬 幸一さんに人生相談を申込む
著者の村瀬 幸一さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます