塀の中へ 最終回,Compensation and regeneration 償いと更生
管理棟で最後にお話させていただく。
刑法を調べてみると、入所後10年経てば仮釈放の権利が発生するらしい。それに基づいて仮釈放がなされていたようだ。
しかしこの世の中、勧善懲悪の風潮が強くそんな短期で出すなんて、もってのほかと言う声が強いらしい。
反面、そのために刑務所の定員もすべてオーバーしているという現実もある。
30年・・・私が今から入れば70歳。気の遠くなるような年数である。生きて出られるかどうかわからない。
・・・なんとも切ない話。
親なのか、子なのかわからないが、犯罪者の親族というだけで関わりたくないだろう。
でも、家族達がしっかり見守ってやれば彼は犯罪者にならなかったのかもしれない。。。
それは誰にもわからない。
世の中の情報がストレートに壁の中に伝わっている今、ある意味残酷なのかもしれない。
それだけの罪を犯した人間と言ってしまえばそれまでだが・・・
根木技官、川口技官に色々とお世話になったお礼をいい、刑務所を後にした。
なんだか、本当に釈放された気分になった。
その後、刑務所の前にある刑務作業即売所というところに立ち寄ってみた。
近くに住んでいた頃から存在は知っていたのだが、一度も入ったことがなかった。
今回、このようなご縁もあり最後の日に立ち用ってみようと思っていたのだ。
中にはいってみると、意外に広い。
ここの刑務所のものばかり売っているのだろうと思っていたのだが、全国の刑務作業のものが販売されていた。
たんすや椅子などの木工品はもちろん、財布などの革製品、醤油やうどんといった食料品、メモ帳などの印刷品、石鹸や歯磨き粉といったような物まで販売されていた。なんと神輿なんてものまで売っていた。
刑務所見学の記念品だろうか、「〇〇監獄」とかかれたメモ帳には笑ってしまった。きっと洒落が分かる人が企画し制作したのだろう。
比べるものがないからわからないが、そんなに高くないと感じた。人件費が安いのかもしれない。
そのお店にいらっしゃった方にお話を聞いてみた。
そのかたは刑務官のOBとのことで「何でも聞いてください。お話しますから」といってくれた。
私は公務員などとても目指そうなんて考えたことなどなかったが、公務員の中でも人気、不人気はあるらしい。その中でも刑務官は不人気という。夜勤もあるし、体力もいる。接する人間たちは、みな犯罪者達・・・
確かに、私はなりたいとは思わない。というか務まる自身がない。
様々な思いのまま、即売所を後にした。
この一週間、色々と貴重な体験をさせていただいた。
民間人が説明のためにこれだけの期間、塀の中に入っていくというのはかなり珍しいことらしい。
国というもの、犯罪というもの、人間というもの、法律というもの、色々と考えさせられた。
おかげで、私の人生観というものが少し変わった気がする。
なるべく多くの人に、この現実を知って欲しい。
目をそらさずに見て欲しい。
そして、考えてみて欲しい。
明日、あなたが塀の中へ入ってしまうかもわからないのだから・・・
※登場人物名は全て仮名です
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