カタルーニャの記憶
「おいガキ、これからは相手を見て物を言うんだな」
勝ち誇った顔をし坊主は去った。
「...ふん」
立ち上がり、体についた埃をパンパンと振り払う。
「...」
自分の町で、他人が好き勝手するのはどうにも気に入らない。
一日に2度、無様な尻餅をつかされるのも気に入らない。
しかし、かといって、面倒事にまきこまれるのはまっぴらごめんだ。
きびすを返し帰り始める。
「んっ?あっ!!」
シャツの一番上のボタンが外れていた。
「ハゲに掴まれた時か...」
ぎりりと、悔しがる少年。
「はっ!これがバレたらターニャに殺される」
ぶるぶると、震えだす少年。
「でもなんとか謝り倒せば、命だけは...そうだよな、さすがに命だけは」
額の汗を拭う。
「なんとかなる、なんとかなる、落ち着け」
自分に言い聞かせ深呼吸をする。
ふう、と一息つき落ち着きを取り戻す。
それにしても、どう見たってカタギの人間じゃなかったなあいつら。
オッサンに、ハゲ、赤毛、先ほどのやり取りを思い出す。
だが、問題はハゲだ。
あの野郎、ボタンをどっかやりやがって。事の重大さをよく理解してないな、あいつは。
ふつふつと怒りが湧いてきた。
「...しかし相手を見て物を言え、か。...確かにその通りだぜハゲのおっさん」
そう言うと、ガサゴソとポケットから新たな戦利品を取り出す。
「相手を見て物を言わないと、銃口とキスさせられたり、財布が無くなったりする。......全く世知辛い世の中だぜ」
へへへ、と笑い、手早く財布の中身を改める。
「...50もないな」
少し肩を落とす少年。
怖い上司に、安月給。ブラックだな。...黒服なだけに。ふふふと忍び笑いを洩らす。
「...帰るか」
時刻は夜に差し掛かろうとしていた。
立ち止まり、空を見上げる。沈みゆく夕日を見上げ、知らず、眉間にしわが集まる。
「......」
「......」
「(......ターニャのやつ怒るかな......晩飯抜きってことはないよな。)」
額の汗を拭う。
無造作にポケットに手をつっこみ、歩を進める。
「......」
路地を歩いていている少年の後ろ姿は徐々に小さくなり、
やがて夕闇の中に消えていった。
終わり
あとがき
自分の駄文をここまで読んで頂きありがとうございます。
ここだけ読んでる人もありがとうございます。
むしゃくしゃしたので書きました。後悔はしてません。
汗水たらし、血反吐をはきつつ、まあ楽しんで書きました。
何かしらの反応をいただければ幸いです。
Yasuo
28,June,2014
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