普通の主婦の普通じゃなかった半生 13 (実話自伝)登校拒否〜身障者〜鬱病からダイバーへ

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子宮摘出。




鬱病が長く続く原因になったのは夫の母だけではありません。

もっともっと大きな原因がありました。


30代後半、私は妊娠をしました。

何故?そんな年齢まで妊娠しなかったかというと、できなかった訳では無くて、私は子供が欲しくなかったからでした。

正確には欲しくなかったというより恐かったのです。

母になって自分がやっていける自信が無かった。

ネグレクトで育った私が自分の子を同じようにしてしまうんじゃないかと、そう思っていました。

幼いとき、父にも母にも愛情をもらえなかった私が、自分の子に愛情を注げるかとても不安だったのです。

だけど、30代後半になってやっと自分に子供を育てる自信ができた時、やっと妊娠することができた時には、手遅れになっていました。

私の子宮には握り拳ほどもある大きな筋腫ができていました。

同時に子宮内膜症も見つかりました。

私たちの小さな赤ちゃんは私の筋腫に挟まれて大きくなれずに亡くなりました。

妊娠4ヶ月の時でした。



二回目の妊娠はありませんでした。

私の筋腫はとても大きく、生理の時の出血が多すぎて血液の量が普通の半分になっていました。

常にひどい貧血状態でした。

怪我をして出血すればすぐに命に関わる、そんな状態で内膜症もあった私は筋腫だけ取り除くことが不可能で、お医者さんに子宮の摘出を勧められました。

子宮を取ってしまうことは女でなくなってしまうこと。

もう子供は望めないこと。

子宮摘出手術は歩けなかった足の手術をする時よりもずっと辛い決断でした。

でも、選択肢は他になかったのです。

私は子宮摘出の手術を受けました。

手術が終わって麻酔から覚め、付き添ってくれていた夫が仕事に行ってから、私は生まれて初めて人前で看護師さんたちの前で声をあげて泣きました。

しゃくり上げるほど大泣きしました。

恥も外聞もなかった。


ごめんね。産んであげれなかった子供に。

ごめんね。父親にしてあげれなかった夫に。

ごめんね。孫を見せてあげられなかった母と夫の両親に。

それまで我慢していた感情がこらえきれなくなって押し寄せてきて、私はただただ悔しかったです。

辛かったです。

それはいろんなことがあった私の人生の中で一番辛かったことでした。


身体の傷は癒えても心の傷は長いこと癒えませんでした。

私は夫に八つ当たりをするようになりました。

夫が悪いわけではない、それは重々わかっていました。

だけど、心のジレンマをぶつける相手は夫しか居なかったのです。

私は子供の時と同じように現実から逃げていました。

そして度々パニック発作をおこしました。

夫はできるかぎりのことをしてくれました。

散歩が良いと聞けば、早朝でも深夜でも散歩に連れ出してくれ、

私の心が安まるように、休みを取ってリゾート地に旅行に連れ出してくれました。

ただ海を眺めのんびりする旅でした。

海を見ていれば私の心は落ち着きました。

昔の彼と同じように夫は私を海に連れて行ってくれました。

海が海だけが私を癒やしてくれると夫は知っていました。


海に潜ってみたい。

若い頃からの憧れを実現したのはそんな時でした。

私はリゾート地で体験ダイビングに一人で行くようになりました。

海の中の世界は私の想像を超えた美しさでした。

嫌なこと辛いこと、すべて忘れることができました。

何度でも潜りたくなりました。

ずっと海の中に居たかった。。。


でも、家に帰ればまた現実と直面しました。

プライベートの無い、子供が産めない自分。

その現実。

夫にまた八つ当たりしてしまう自分。

そんな自分が嫌で仕方ありませんでした。


同居して5年目、ある日突然夫が賃貸マンションの間取り図のファックスを私に見せました。

「ここを出よう!すぐに。」

夫はそれだけ言いました。

鬱病を治す一番の治療法は環境を変えること。

夫は二世帯住宅からの家出を決めてくれたのです。


私たちは1週間も経たないうちに二世帯住宅から家出し、またマンション暮らしをはじめました。

そのマンションには2年間居ました。

そして急成長した夫の会社の持ち株を売って、私たちは二世帯住宅のローンを完済し、自分たちだけの家を持ちました。

それが今、住んでいる家です。

ここが、この小さな家が、私の「家」です。

ずっと借家暮らしだった私にとって、はじめて自分の家だと思える家です。

先代の猫、ピキオとビーは15歳と18歳で逝ってしまいましたが、

今は黒猫の「福」8歳と白猫の「天」1歳3ヶ月が私たちと暮らしてくれる家族です。

福は捨て猫で生後3ヶ月まで虐待を受けていた子。

天については次に書きます。

天は家に来てくれるために生まれてきてくれた子でした。


写真 「福」

写真「天」










14へ続く。
















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