2週間で3000件のエンジニア職応募につながった斬新な有給休暇制度と採用プロセスとは?

米デンバーにあるスタートアップ「FullContact」は、Webアプリ開発者向けに、ユーザーの連絡先とソーシャルメディアの情報をひもづけるAPIを提供している。http://www.fullcontact.com/

2012年7月、同社はより多くのエンジニアを採用するために、ユニークな有給休暇制度を発表し、わずか2週間で3000件以上の求人応募を獲得した。


その有給休暇制度は「Paid, Paid Vacation」と名付けられ、CEOの Brant Lorang(以下ローラン)氏によって自社ブログにて発表された。


この取り組みは、短期間で影響力のあるブロガー達にとりあげられただけでなく、CNNやFOXなどの有名ニュース番組でも取り上げられ、現在までに2000以上のRTと250以上の件のコメントがついている。


この制度を発表してから二週間後、ローラン氏はブログで、3000件以上の求人応募を受けたこととを発表し効率的な採用秘訣を公開した。


有給休暇中の遊び代$7500を従業員にプレゼント

2012年にエクスペディアが22カ国の会社員などを対象に行った調査によると、米国の平均有給休暇12日に対しての消化日数は10日だった。


そんな中、FullContact社は、従業員に対して、平均より長い15日の有給休暇をあたえ、さらに有給休暇中の遊び代として$7500(日本円で約75万円)をプレゼントした。


ただし、この遊び代をもらうには3つの条件がある:

必ず旅行に行くこと

旅行中は一切ネットを使わないこと

旅行中は一切仕事をしないこと


旅行中に一切ネットを使わないということは、iPhoneやiPad、ノートパソコンを使わないということだ。これは、現代人にとって難しいことであろう。


特に同社のエンジニアのように、常にガジェットかこまれ、ネットを使い生活してる人にとっては、ネ非ネット環境の中旅行することは、とても勇気のいることである。


なぜ従業員の遊び代に$7500も払うのか?

それは、同社が、有給休暇中に、ネットに接続したり仕事をすることは、健康によくないと真剣に考えており「非ネット環境に身をおくことで従業員は心身ともにリフレッシュでき、仕事にもどったときに高い生産性を発揮し、バランスのとれた生活をおくり、長期的に会社にコミットしてくれる」と信じているからだ。


実際に、この制度を使って旅行に行った従業員は、「旅行中にネット使わないことは、非常に難しいことだったが、予想以上にリフレッシュできてよかった。来年も楽しみだ」と答えているので、従業員にとって満足のいく制度かた、優秀な人材を長期的に雇用するために有効であることがわかる。


また、このように話題性だけでなく、実際に従業員にとって有益な方針を打ち出すことで、スタートアップでも大手に負けないくらい優秀な人を採用し、長く雇用することができる。


それは同社がこの施策を打ち出して二週間で、3000件の求人応募を受けたことが証明している。


米国のスタートアップは、GoogleやYahoo!のように大手企業のように、エンジニアに高い賃金を払えないので、こういった独自性のある採用方法や、会社のカルチャー(企業文化)を全面に出していくしかない。


3000件の求人応募に2週間で対応

ローラン氏はブログで採用のプロセスを包み隠さず公開している。それをステップごとに要約すると以下になる。


1. 学歴や資格のスクリーニング

応募者が以下の条件のいずれかを満たしていれば、ステップ2に進む。もし満たしていれば、ステップ9へ。

求職者は、いずれかのポジションで求められている以上の学歴や資格がある

求職者は、いずれのポジションで求められていないが、特出すべき学歴や資格がある


2. 自動ビデオ・インタビュー、または15分間の電話インタビュー

事前にTakeTheInterview.comを使用して自動ビデオ・インタビューの設定をしておき、人事から求職者に、ビデオ・インタビューのリンクを送る(このツールは米Zapposも使用)。


または、15分間の電話インタビューのスケジュール調整を行う。合格者はステップ3に進み、不合格者はステップ9へ。


3. 簡単な問題をメールで送信

エンジニア職の場合は、簡単な問題を求職者にメールで送る。良い回答を遅れれば、求職者はステップ4へ。そうでない場合はステップ9へ。


4. 一次面接

人事部長がオフィスで求職者と面接を行う。もし合格した場合は次のステップへ。だめな場合はステップ9へ。


5. 二次面接

人事部長以外の従業員が面接を行う。合格の場合はステップ6へ。不合格者はステップ9へ。


6. リファレンス・チェック

求職者の上司や元同僚など、求職者の許可を得た上で、求職者の仕事ぶりがわかる人に電話する。


7. 採用決定を通知

もし、求職者が採用を受け入れた場合は、ステップ8へ。そうでない場合は、条件面の交渉を行う。


8. 求職者にFullContactオリジナル・ヘアバンドをプレゼント

FullContactの従業員がイベントで使う、オリジナル・ヘアバンド、プレゼント。


9. 不採用を通知

FullContactとマッチしない求職者には、人事部長がメールで不採用を通知する。


スタートアップの斬新な採用活動を見習おう

有給休暇をとる従業員に$7500も払うなんて、いかにも費用対効果の悪そうな施策である。しかし、ローラン氏は、素晴らしいエンジニアを雇うをことを考えれば、年間$7500余分に払うことは、経営的に全く痛くないという。


これは米国では、スタートアップがエンジニアを採用し、長く働いてもらうことが、どれだけ難しいかをものがたっている。日本のエンジニア採用状況は、米国と似つつある。今回の事例を参考に、エンジニアが喜び、かつ話題になるような施策を、思い切って打ち出していくのも面白いだろう。


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