「番外編:13年のお勤めに感謝」

…貴方の異変に気づいたのは

 昨夜の嵐の後だった。



 数ヶ月続いていた異常を知らせる

 サインが消えていて、



 加減がよくなったのかな?と

 無責任な期待を抱きつつ、


 貴方にコンタクトしてみた

 けれども、動かない。


 数年前に経験した異常と同じ

 ケースかと考え、

 今回は医者を呼ばず、比較的

 冷静に、チェックポイントを一つ

 一つ、チェックしてみた。


 途中、ある異変に気づいた。 

…骨が折れている…。

 その時は、深く考えず、

 動かないその手に、何か

 引っかかっていないか、

 障害になるものが無いかを

 探していた。

 でも、背中を見た時に、

 不安が蘇った。

 ぷっくらと膨れ上がった背中。

 探ってみると、破れた部分から

 処理を終えたものが流入していた。

 出来る限りの手をつくしたつもり

 だが、


 残念ながら、貴方の手は再び、

 動き出すことは無かった。


 13年間、私たち家族に従い、

 無理難題をこなしてきてくれた。

 黙って、もくもくと作業をこなす。

 私たちも、貴方に任せれば安心だった。

 貴方の作業のおかげで、庭に

 活気がいきわたった。庭の恩人である。

 骨が折れた部分を手で触れてみると

 これまでの作業で、あんなに固かった


 ものが、ここまで薄く、もろく
なるものかと


 非常に驚いた。

 破れた部分は紙より薄くなっていた。

  13年の年月の間、少しずつ、

 削れていったのだろう。

 私たちの知らない中で…。


  今、思えば、先日の受け入れ

 の不具合に、何か兆候があったのかも

 知れない。何かを知らせようとして

 くれていたのかも知れない。


  骨が折れたこと、その結果、

 内部へ流入した処理物が

 膨れ上がり、受入部に無理な力が

 かかっていたのを知らせてくれて

 いたのかもしれない。

 …でも、結果的に私たちはそれに

 気づけなかった。


  そして受入部の不具合から1ヶ月。

  私たちに気づかれること無く、

 そして仕事を怠ること無く、

 力尽きるまで、働いてくれた。


  この一ヶ月、不調を抱えながらも、

 仕事ぶりはそれを感じさせること無く

 最後の最後まで最高だった。


  不調を抱えながら、期待をこなす

 姿を想像すると、とても胸が

 熱くなるのを覚える。


  何も言わなかったけど、弱音を

 吐かなかったけど、辛かったのでは

 なかったかと。

  本当に、ありがたいと、共に、

 気づいてあげれなかった事を

 悲しく思う。

  役目を終えた、その姿を見るのが

 辛くて、そして、最後だけでも、

 自分の手で連れて行きたくて、

 一緒に車で行くことにした。

  目的地に着いて、自らの手で

 ゆっおろしたけれども、


 …担当の方への引き継ぎを優先

 させてしまい、

  結果的に、最後に貴方に声を

かけることができなかったことを

後悔している。

  なので、こうした手紙を

 書いている。


  本当にありがとう。最後の最後まで

 ありがとう。

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