殺したいほど憎かった酒乱の親父が言っていた「〇〇になるなよ」という言葉が生きる力になっている話

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刻々と親父の死期は近づいていった。



余命を告げられてから3ヶ月を過ぎても

親父はなんとか頑張っていた。


しかし、次第に食事もできなくなり、

私も家族も親父はもう長くないと理解し始めていた…。


そんなある日、

親父がポロッと言葉を漏らした。


親父
釣ったばかりの新鮮なアジの刺身が食べたいなー


食事が取れなくなっていた親父は

大好きな刺身を食べたいと言ったのだ。


親父の唯一の趣味だった魚釣り…


よしっ!俺が釣ってくるよ!


そして私は、その日の夜に早速釣りに出掛けた。


私がまだ小さい頃に親父が教えてくれた仕掛け通りに

私は見事大きなアジを沢山釣って持って帰った。


私が深夜に帰宅すると、

ヨロヨロとしながらも親父は起きてきて、

魚の入ったクーラーボックスを見て嬉しそうに言った。


親父
いいアジが釣れたなー。
明日母さんにさばいてもらって食べよう。


そして次の日、親父は嬉しそうに

私が釣ってきたアジの刺身を

しっかりと味わいながら食べてくれた。



これが親父の最後の食事だった…。


そして、私が親父の為にできた

最初で最後の親孝行だった。



それから1週間後の

2004年10月26日に親父は死んだ。


私が20歳になったばかりで

成人式を迎える前に親父は逝ってしまった。


親父の言葉が

何度も何度も頭の中を駆け巡った。



「俺みたいになるなよ」


「俺みたいになるなよ」


「俺みたいになるなよ」



親父に対しての憎しみなど

とっくに私の中から消え去っていた。


いつも酒ばかり飲んで、酒を飲んでは暴れて、

仕事もいい加減でギャンブルばかりの

どうしようもない親父だった。


でも私には、

たった1人しかいない親父。


親父は不器用だった。


大人になった今なら理解できる。


親父も孤独を抱え、酒に逃げ、

変えたくても変えられない自分を卑下して、

負のスパイラルから抜け出せなかった。


それでも自分の子供には

自分と同じような道を歩んで欲しくなかったんだと。


不器用ながらも親父が私に伝えてくれた

精一杯の言葉が「俺みたいになるなよ」

って言葉だったんだと今なら理解できる。


そんな不器用な親父が残してくれた言葉が

今までも今もずっと私の心のなかには残っている。


親父が死んでから今日まで、

親父みたいにならないように

自分と向き合い続けて前に進み続けてきた。


親父が死んでからの10年間は

たくさん辛いこともあった。


でも、いつも親父の言葉を思い出す度に

それを私の生きる力にしてきた。



もっと早くに親父のことを理解できていたら

もっとたくさん色んなことを話せたのにって

後悔したこともたくさんあった。


でもだからこそ、

伝えたいことはすぐに伝えるし

やりたいことはすぐに行動に移してきた。


明日何が起ころうとも

親父の言葉を胸に刻んで

今日という日を精一杯生きていく。



「俺は親父みたいにはならないから!」



おわり





最後まで読んでいただきありがとうございました。


書きながら涙が止まりませんでした…。


親子であるが故なのか、

親父のその時の気持ちや

どうしてあんな親父になったのかが

痛いほど理解できるからです。


過激なタイトルではありましたが、

決して本気で親父を殺そうとなどは思いませんでした。


少しずつ成長していく中で

親父という人間を少しずつ理解していきました。



世間的に見れば親父はクズ親父だと思います。


私もそう思います。


でも、私は親父に感謝しているし

親父は私にとってたった一人の

かけがえの無い親父です。


親父の生涯を通じて

私にたくさんのことを教えてくれました。


人の弱さ、強さ、

人生の苦しみ、楽しみ、

そして命は尊いということ。


それは私も親父と同じような経験を

積んできたからこそわかることがあります。


私の人生も決して順風満帆ではありませんでした。


でも、そこから学ぶことを忘れず、

逃げずに行動を変えてきました。


それは親父が私にくれた「俺のようになるな」

って言葉があったからです。



私はここには書いていない

たくさんの経験を積んできました。


そして、2年前から地元を離れ

東京でビジネスを学び、

今は多くの仲間と共に事業をしています。


とても幸せに過ごしています。


本当に最後まで読んでいただきありがとうございます。



あなたにも両親や大切な人からもらった大切な言葉がありますか?



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