職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話

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15歳で中学を卒業。

自分で見つけた、その道の師匠のもとに住み込みで弟子入り。

20歳で独立。

九州から、東京へ。


自分の腕一本で生きてきた、職人。

学歴フィルターとか、受験戦争とか、偏差値とか、

そういうものとは無縁に生きてきた。

生真面目に仕事に向き合い、

周囲の人との信頼関係を結び、

名刺さえ持たず、自分の技術だけを頼りに働いてきた。


そんな職人がパパになった。

娘に「よい環境、よいお友達との時間」を与えたいために、

考えぬいて、行き着いたのは、「お受験」への挑戦だった。


野山で駆け回るような環境は、今の東京にはない。

運動といえば、

スイミングスクールや、サッカースクール、体操教室などのスクールが主流。

近所のがき大将を中心とした、上下の人間関係にもまれる機会も、

学童保育や、塾で、安全を確保されている小学生が多いなか、

のぞめるはずもない。


ならば、学校の方針として、体を使うことを奨励している理念をもつ小学校、

一貫教育で、上下の連携が強く愛校心をもつ家族が集う小学校、

東京には、そんな私立小学校があることを知るようになり、

パパは、「お受験」のトビラを開けた。





【おたくのお子さん、お絵かき、好きですか?】


「お受験」というと、お金持ちの子どもが、お行儀よく、

紺色スーツママに手をひかれているイメージだろう。

ほぼ、それでまちがいない。たぶん。


そして、伊勢丹や、三越などのデパートの子ども服コーナーにある、

紺色のジャンパースカートに、かわいい刺繍のカーディガンや、

ベストに濃紺の半ズボンが並び、

小さな黒い革靴やレースの靴下が、おすまし顔で並んでいるのを見れば、

「お受験」というもののが、

しあわせなファミリーの象徴のようにも感じられるはずだ。


中学校受験は、サピックスをはじめ、早稲アカ、日能研、四谷大塚と、

駅のポスターで見かけるほど、塾が活況を呈しているし、

高校、大学受験ともなれば、地元個人塾から、駿台、代ゼミ、

「今でしょ!」の東進ハイスクールなど、

大手塾や、通信教育、参考書やら問題集、

昨今は、ネット講義など、用意されているノウハウは、たくさんある。


しかし「お受験」とよばれる小学校受験、

となると、ちょっとちがう。


幼児の場合、

「勉強をする」というのと、

「お受験の準備」というのは、イコールではないからだ。


そもそも、幼稚園児は、

「文字」「数字」が書けない、読めないというのが、

文科省の前提。

(だから、小学校にあがってから、ひらがなを学び、数字を書く)。

ということで、ペーパーテストの文字は、読めないし、

答えを、文字で記述させるようなテストを課すことがあってはならないのだ。


と、すると、どうやって、合格、不合格を決めるのか?

すべての小学校の入学試験で課されるわけではないが、


①「絵画、工作」

②「おはなしの記憶」

③「ペーパー」

④「体操(リトミック、ダンス、ボールの扱い、鉄棒など)」

⑤「行動観察」

⑥「巧緻性(ときに生活巧緻ともよばれる)」

⑦「親子面接」


などのジャンルが、小学校受験の課題にはある。


「絵画、工作」は、ご存知のとおり、出されたテーマに沿って、

画用紙にクレヨンで描いたり、粘土で造型する。

しかし、ただ普通に描いていたのでは、普通に落ちる。


職人パパは、「ここがいい!」と考えた小学校には、

8倍という倍率が発表されていたし、

それを勝ち抜くには、すくなくとも、8人の子どもの絵が並んだ中で

「おお!これは、いい」と試験官に思われなければ、ならないということだ。


しかし、幼稚園児の描く絵に、そんな差がつくのか?

差をつけるためには、どうすればよいのか?


「お受験絵画の世界」の「基本のキ」といわれるのは、

「正面だけの顔ではなく、横向き、後ろ向きを描きましょう」。

つまり、「おともだちと、あそんでいる絵」にしろ、

「夏休み、楽しかったこと」にしろ、

描かれている全員が、こちらを向いているのではなく、

お互いに顔を見合っているような、後ろ向きの子が駆け寄っているような絵ならば、

「動き」が出て、見る側からすると、よりよい絵になる、ということらしい。


そして、何より、ここで大事なのは、

「絵画、工作」というのは、描く技術や、手先の器用さを見たいのではなく、

その子どもの、これまでの家庭での生活や、発想力、表現力を読み取りたいものだということ。


「お声かけ」とか「お問いかけ」と、この世界でよばれる、

試験官による、子どもへの試験中の質問がある。

これは、すべての受験生になされるのではなく、

試験官が「これは・・・」と思った子どもに、

「これは、どういう絵なの?」「これは、何をしているの?」などと声をかけ、

その子どもの表現したいことを、掘り起こす。

絵がへたでも、工作が多少苦手でも、表現したいものがしっかりと語れることで、

その子どものもっている資質や、力を把握するのだろう。


娘・あ~ちゃんの試験日には、

「世界でいちばん、おいしい食べ物」

を粘土で作るというのが、お題だった。


試験後のあ~ちゃんに何を作ったのか?と聞いたところ・・・。

「あのね、おとなりの子がね、ライオンを作ってたの。

それで、先生がこれは何ですが?って聞いたら、

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