『早稲田出ててもバカはバカ』ハタチで3000万稼いだ伝説のAV女優・サヤカ

全編紹介

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~中略~

 他方で、この業界を心から楽しんでいるオンナの子もいた。

 私がクスリで覚醒しながら通常業務をこなし、あり余る体力で、人気A∨女優のマネージャーを兼任していた時期のこと。ゴトウ社長は最終的に芸能プロダクションを作るという構想を持っており、AVはそのパイロット事業だった。

 そこで出会った女優・サヤカとの出会いも、生涯忘れられない。当時ハタチだった彼女は「(公私含め)経験人数は1000人以上」と豪語していた。生まれ育ちが裏風俗のメッカ・埼玉県の西川口だと言うから、無責任に「そういう星の下に生まれたのだろう」と思ってしまう。学校の勉強に意味を見出だせずに高校を中退し、10代から「西川口流」と呼ばれる違法本番風俗で人気者に。しかし、警察の一斉摘発を受けて現地の風俗産業が根絶やしにされ、AV業界に身を寄せたのだという。

 

「セックスこそ我が人生」

「セックスをするために自分は生まれてきた」

 

 と言わんばかりに、とことんまで性行為を心から楽しむ子だった。彼女は多才で、ズバ抜けた歌唱力もある。あるとき、テレビ局の企画で「AV女優カラオケ選手権」のような特番があり、私はマネージャーとして同行した。彼女はZARDの「負けないで」を見事に歌い、優勝を勝ち取ったのだった。女優を引退した今も、彼女が出演したビデオはネットで出回り、高い人気を誇っているという。

 風俗嬢しかり、この業界のオンナの子は心が荒み、病んでいることが多い。カネのためだけにイヤイヤ嫌いな男にカラダを売り、リストカットや薬物に走る子、ストレス発散のためにホストクラブやブランド物に散財し破産してしまう子、重篤な性病に罹り廃人と化す子──すべて、この目で見てきた。

 そんな刹那的な生き方をする子たちを尻目に、サヤカは稼いだカネはきっちり貯金し、散財もしない。ある日、通帳を見せてもらって驚いたが、ハタチで3000万円以上の残高が記載されていたのだ。

 仕事を楽しみ、ストレスを貯め込むこともないから、ホストクラブにハマることもない。高級マンションで絢爛豪華な生活をするでもなく、実家に住み、両親とも良好な関係を保っているという。エステにも通わず、化粧をしなくても肌ツヤがいい。性病にも無縁で、こんな子もいるのだ、となぜか感心させられた。

 

「『サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化理論』って知らない? 科学的にも、セックスで絶頂を感じることが最大の美容法だとされているんだよ。だから、私は心身ともに健康なの。ワセダを出て、そんなことも知らないの? 私、やっぱり学校を辞めて正解だったわ(笑)」

 

 彼女は勉強熱心で「成功者の普遍的な心理構造をつかむため」と、日経新聞の人気連載『私の履歴書』を愛読。さらに朝日、読売の2大新聞も購読し、「論調の違いを把握して、複眼的な視野を養いたい」とも語っていた。

 

「ほら、私を口説いて、抱いてみなさいよ。一流大卒のぼうや(笑)」

 

 天真爛漫でSっけのある彼女は、AV撮影の控室で全裸になり、時には四つん這いで悩殺ポーズを決め、中指を立てて私を挑発してくる。しかし、自分以上に勉強し、仕事を楽しみ、稼いでいる彼女に言い返す言葉がなかった。

 そんな彼女に、将来の展望を聞いてみたことがある。それだけ蓄財して、一体どうするつもりなのか? 彼女は大切にしているノートを開き、自身でノートにしたためた古典の一節を見せた。

 

【一年の計は穀を樹うるに如くは莫く、十年の計は木を樹うるに如くは莫く、終身の計は人を樹うるに如くは莫し】

 

「……管子かな?」

「これも分からなかったら、学歴詐称を疑っているところだよ(笑)。私が大切にしているのは、この〝十年の計〟。人間には旬の時期があって、私は〝オンナの武器が駆使できる旬なとき〟は25歳までだって、勝手に信じてるの。だから15のときに、決断して高校を中退したのよ。私の十年の計に、詰め込み暗記ごっこの学歴なんて必要ない」

 

 自分とは「学歴」に対する考えが正反対で、覚悟もまったく違う。サヤカは続けた。

 

「それよりも旬なうちにオンナの武器を使って、最大限にレバレッジを利かせて、カネを稼ぐ方が利口でしょう? 私は25までに、最低5000万貯めて引退して、専業主婦になる。稼いだカネは、両親や子どものいざってときのために取っておくの。だって子どもが『フィギュアスケート習いたい』『バイオリン習いたい』『留学したい』って言ったときに、カネがなくてその願いを叶えてやれなかったり、親が病気になってもいい病院に入れてやれないほど惨めなことないじゃない? カネがないと何もかもがうまくいかなくなる。逆にカネはいくらあっても困らないし、人生の選択肢が広がっていく。カネに振り回されて家族が不幸にならないために私は今、頑張って木を育てているの」

 

 ハタチの子の人生哲学に脱帽させられた。そして、彼女はカネを得て堕落する人間ではないのだろうと、その資質の高さを直感させられたものだった。果たして今、どこで何をしているのか──いたずらな笑顔を、時おり思い出す。彼女のこと、見事に人生を設計し、十年の計から終身の計に移行しているに違いない。


~つづく~

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