企業舎弟とか自己破産とか出版とか

へー自分語り専用サービスですかすごいもの考えたな。
書く方も書くほうだけど。
少し前から、初就職の話からがいいのかな。
当時はバブル崩壊直後でええはい。
mixiとかでここまで濃い自分語りするのもどうかと思ってたけど、専用空間ならええやね。
 では改めて。
 当時の選択と行動に鑑み、今も昔も人というものは容易に変化はしないものだと、少なくとも私という人間はそうなのだと再認識する。
 その会社、仮にY、としよう。現在は確か店頭公開しているはずである。
 志望動機が振るっている。
 バブル崩壊直後なら良かろう、という完全な逆貼り、
 というより、根拠の無い、正に若気の至りとでもしか表現の方途が存在しない事由であろう。
 Yは、「施工図作成代行」を業務とする会社であった。
 そして私は、施工図の何たるかに対し知識も理解も関心すら無く、Yという就業先を検出し、選定し、面接を受けた。前述の通り、バブル経済崩壊直後の、その影響の直撃を受けたゼネコン、その周辺業界、というカテゴライズのみがその意思決定の理由である。
 今少し分析的視点が許されるなら、その苦境にあって尚新人を募集する余力、とでもいうようなささやかな補強材料が、非言語の直情に包含されていた、のかもしれないとは、しかしこれは後年の後知恵であろう。
 何より当時、企業人員の定着率、回転率などという、昨今の就業事情では当然把握しているべき予備知識など皆無であった。
 つまり業界も、Yも、そうした環境にあり、そして青二才の私は当然、それに思い至ることも全く無かったのである。
 ……極めてオーソドックスなダメ社会人人生の開幕ではあるが、種々の伏線を孕んで物語は面白おかしく今日にまで展開して行くのでまずはYでの顛末からお付き合い願いたい。
「~クソの様な設計図書きやがって、ねえ!」
 一級建築士相手に、素面であれば殴り倒されてもおかしくない暴言を吐く。
「いやそれは、施工側で意図を汲んでやらないといけないのよ」
 もう思い出せない、温厚な彼はたしかそんな穏便な諭し方をしたと。
 建築設計施工者の意図を体現すべく、実地に数値を埋めていく作業の図面を、施工図と総称する。基礎図、躯体図(コンクリート)、タイル割り図。
 躯体の強度を算出し、開口を求めると、内部構造が躯体を突き破るような設計図も出現する。冒頭の会話である。
 本来は、現場管理者の最下層に当たる、主任クラスがこれを作図する。
 そうして、現場を、施工を体得していくのだ。
 或いは、現場に出向した作図部隊が現場監督と首っ引きでプランニングしていく。
 当社は、「施工“下図”」と呼称していた。
 設計図をお貸し下されば、作図代行します、と。
 本来であれば、現場の進捗状況に合わせ、作業員とも綿密に意思疎通しながら作成し、設計施工、建造の詳細を詰めいていく工事現場の作業工程図の意味を持つ。
 当社はそれを、更に海外に発注していた。韓国、フィリピン。
 梁が一本掛けている。縦貼りのタイルが横で上がって来る。
 バブル時代は、それでもかなり重宝されたらしい。ダメ元ででも作業工程短縮の、ネコの手くらいの役割は果たしたそうだ。
 事実、「施工下図」として割り切って使ってくれる現場監督とはそこそこ仲良くなれた。取引再開、新規開拓、にも成功した。OQ建設、KBK建設。
「この現場、いくらだと思う、2億だぜ」
「お、掛かってますね」
「判ってきたね、きみ」
 しかし、そうした善意に触れるほどに、
 迷惑を売ってお金を貰っている、という青臭い良心が軋み、
 1年程で臨界を迎えて
 どこに行っても、いっしょだよ。
 課長の言葉を背に、Yを去った。

著者の大橋 弘之さんに人生相談を申込む

著者の大橋 弘之さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。