オーストラリア留学中にネット中傷被害に合い、裁判を起こした話(9)

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IT業界では一般的なのだが、同僚と言っても八田さんは同じ会社の社員ではなく、別の会社からビジネスパートーナーとして来ていたいわゆる下請の立場にあたるメンバーである。私の勤めていた会社には八田さん以外にも同じ立場のメンバーが多くいた。一部例外はいたものの、総じて社員よりも優秀な人が多かった。

なかでも八田さんは特別だった。当時大学生の娘さんがいる年齢で他のメンバーよりも年齢が高く、経験豊富で非常に優秀なエンジニアだった。また、過去にはアメリカで働いていたこともあると聞いた。


私はこのチームに配属された当初、この八田さんとのやり取りに非常に苦労した。私を含めた本体の社員が2名、パートナー社員が5名、そして中国にオフショアのメンバーが2名いるチームだったので、本体の社員である私は自動的にリーダーポジションとならざるをえなかった。当時20代前半で新卒入社2年目、大学時代にITを専攻していなかったにもかかわらず、八田さんを筆頭としたベテランエンジニア達に仕事を指示する立場になったのである。


それはもう、私の指示はめちゃくちゃだったことだろう。八田さん以外のメンバーからも私の指示の仕方に関して反発はあったが、特に八田さんからはストレートに反発があり、厳しい言葉を投げかけられれたこともあった。

八田さん
は、何言ってるの?(笑)

といった態度は日常茶飯事で、情けないことに私は完全になめられきっていた。八田さんとのやり取りが上手くできず、半泣きになってしまったこともある。他の先輩と同じように上から指示をしても聞いてはもらえない。会話をしようにも、自分の知識、経験が全く足りない。なめられようが、反発されようが、それでも話し続けた。


ここまで書くと八田さんは性格が悪いように見えるかもしれないが、あくまでも私がなめられきっていただけで、非常に温かな人柄をしていた。仕事の合間に世間話をしたり、私の仕事上の悩みを聞いてくれることもあった。


私が留学のために会社を退職する少し前、八田さんは会社を去らなければいけないことになった。会社の方針としてパートナー社員の数を減らすことになり、一番高額なエンジニアだった八田さんがターゲットになったからだ。上司と先輩社員によって下された決定で、私は何もすることができなかった。最後の出社日、私と先輩社員に見送られてエレベーターに乗り込む八田さんの姿は今でも目に焼き付いている。

その後、私が会社を辞める時にも送別会に八田さんは来てくれ、プレゼントまでくれた。かつて自分自身がアメリカにいたからなのか、私が本当はIT以外のことをやりたいことに気づいていたからなのかはわからないが、IT業界をやめること、メルボルンでグラフィックデザインを学ぶ為に留学することを八田さんはとても応援してくれていた。送別会の後Facebook上で友達になり、私がメルボルンいついて何か投稿するたびに一番コメントをくれたのが八田さんだった。私が落ち込んでいる時には、

八田さん
元気出せよ。

というメッセージを送ってくれたりもした。かつては仕事でバカにされ、上手くコミュニケーションが取れなかった人が私を応援してくれるようになるなんて夢にも思わなかった。


八田さんは今回の私の友人に対する態度、また嫌がらせが判明した後の私の動揺ぶりにとてもがっかりしていた。友人からの"がんばって"という言葉を拒絶した後、八田さんから私にメールが届いた。


メールには今回の私の態度に非常にがっかりしたこと、私の対応を非難する言葉、そしてそのような態度を私が今後も取り続けるのであれば私とはもう関わりたくないという内容が書かれていた。(今でもこのメールは残っているが、自分にとってあまりにも辛く、読み返すことができないので曖昧な内容しか伝えられない。)


私は八田さんからのメールに反論したが、八田さんからはそれ以上に何も返信はなかった。


その後しばらくして、八田さんは私の友達リストから消えた。


頑張って、前の職場で築き上げた人間関係。私を応援してくれた人を失ってしまった。


もうどうにでもなれ


私か完全にやけくそになっていた。


悔しい
悔しい
悔しい
悔しい
悔しい


Deanaが何食わぬ顔で私の偽アカウントを使って、コメントを続けていることが許されなかった。そして、一斉に知らせはしたものの、未だにそれが偽アカウントだと認識していない人がいることも許せなかった。


これ以降の私の行動は常軌を逸したものであったと思う。


まず、チェルシーが手に入れてくれたDeanaとのやり取りのスクリーンショットを友人の一人のタイムラインに投稿した。この友人は中国人留学生でDeanaと一度会ったことがあり、Deanaは彼のことも気に入っていた。(ちなみに「彼は中国人なのにどうして目が大きいの?」というDeanaの発言は彼に対してである。)彼はまだDeanaが私に嫌がらせを行っていることに気づいていなかった。


次に私はDeanaが他にも気に入っていると発言していた男性(一体何人お気に入りがいるんだか)をFacebookで検索し、彼らにスクリーンショットを送りつけた。


メルボルンには複数のランゲージエクスチェンジグループ(日本語を勉強中の外国人と日本人が集まり、お互いの言語で会話する会)があり、そのうちのいくつかはFacebookにグループページを作っている。私はそのグループのメンバーだったのだが、そのページにもDeanaが「偽アカウントを作った」と証言しているスクリーンショットを投稿した。


再び自分のタイムラインを見ると、友人たちの投稿が目に入った。みんな自分の顔写真を堂々と公開している。〜へ行ったといった楽しそうな投稿が目に付く。


なんで私だけが・・・こんなにも多くの人が顔写真を堂々と公開し、プライベートな情報を気にせず全体公開している。なのになんで私だけがこんな目に合うのか・・・・


我慢してきた、ずっと押さえこんできた気持ちが爆発した。


もうどうにでもなれ

お前ら楽しそうにしてんじゃねーよ!!!!!!

何が  「がんばれ」だ????

私はお前らよりずっとがんばってるわボケ!!!!!!!

がんばって、がんばってこれまで来たのにそれなのに妨害されてんだよ!!!!


今のFacebookの仕様では空欄のままでは投稿ができないが、当時はできたのか何か1文字でも入れて投稿していたのかは覚えていない。私は次々と連続で自分のタイムラインに投稿をした。ただ、意味の無い投稿を次々として、私のタイムラインはその気味の悪い投稿で埋まった。これをリアルタイムで見た私の友人達は、完全に私の頭がいかれてしまったと思ったことだろう。


その直後、アイから携帯にメールが届いた。

アイ
なんか連続してすごい数の投稿がされてるんだけど、Mamiさんがやっているの!?

どういうわけかこの時点で私は気に留めていなかったのだが、アイは既に私をFacebookでブロックしており私の投稿を見ることはできないはずだった。それなのにアイが私の投稿に気づいたのには理由がある。私はアイの彼氏とも友達だったので、おそらくアイは彼氏のアカウントを通して私の投稿を見ていたのだろう。警察署へ行った後、予想通り彼氏と会っていたのだ。


私はアイに電話をかけた。

アイちゃん・・・私もうダメだ・・・もう無理。警察は動いてくれないし、証拠は使えないし・・・。もうこんなぐちゃぐちゃになってしまったらやり直せない・・・。もうメルボルンを離れようと思う・・・(泣)

死にそうな声だったと思う。今までこんな声でアイと話したことなんてなかった。

アイ
うん・・・そう・・・。
・・・・・・・わかった。

アイは静かにそう言って、電話を切った。


アイと話したのはこれが最後だ。


この時以来、2015年7月現在まで私はメールも含めアイとは一切連絡を取っていない。

これを最後にアイから私に連絡がくることは一度も無かったからだ。


そしてこのアイとの会話の後、私はあることに気がついた。


Facebookで友達の人数が減っていた。1人、2人ではない。明らかに複数の友人が私を友達から削除していた。


意外な人物からの連絡


ふとメールボックスを確認すると、意外な人からメールが届いていることに気がついた。


ジュエリーショップのアルバイトで一緒だった日本人女性からだった。(最後に出勤した日に顔を合わせた先輩店員とは別の人)彼女は私より少し年上で、私と同じように日本で社会人になってからオーストラリアに渡り再び学生をしていた。


同じ店で働いていたというだけで全くプライベートの付き合いはなく、私はむしろ彼女からは良く思われていないのではとまで思っていた。しかし、私の予想に反して、彼女からのメールはとても暖かいものだった。


オーナーから私が大変な状況になっていると聞いたので連絡したということ、警察が動いてくれないのであれば民事で解決できるかもしれないということ、ストーカーや変な人を遠ざけるための方法として" Intervention Order "というものがあるということ、 Woman legal serviceという公的サービスがあり、女性は無料で相談ができ弁護士を立てることもできるということがメールには書かれていた。


そして、最後に以下のメッセージが添えられていた。

勉強やバイトに集中できないかったりするのはすごく辛いと思います。でも負けないで、自分のやりたいことを貫きましょう!法的手段である程度身の安全も確保できますし、もしそのことで何か力が必要だったら言ってくださいね。とにかくまともじゃない人間は正論を言っても通じないので、相手にしないことです。そして一人で抱えこまないで、いつでも相談してください。


涙があふれた。

彼女に取って私は元バイトの同僚でしかない。私に親切にしたところで何もメリットなんてない。なのにどうしてこんなメッセージをくれるのか・・・・改めて自分は人を見る目がなかったんだなと思った。


私はメールに返信をした。彼女からはすぐにメールの返信があった。


メールの返信には、彼女自身もメルボルンで苦労をして一度は離れるようと考えたこともあること、その時信頼できる友人に精神的に助けてもらったこと、今は辛くて視野が狭くなっているかもしれないので辛いことはどんどん吐き出したほうが良いこと、良ければ話を聞くので連絡してほしいということが書かれていた。


そして最後に、


" 海外へ出てきた行動力があれば大丈夫、苦難を乗り越えることはできます!"


という力強いメッセージが書かれていた。


海外へ出てきた行動力があれば大丈夫・・・・日本での仕事を辞めて、一人海外へ飛び出した同じ境遇の女性からもらったこのメッセージ。「もう十分頑張ってるよ、だからこの先は大丈夫」と言ってくれているようで、涙が出るほど嬉しかった。


そしてこの時彼女が言及した Intervention Order というシステム


このIntervention Orderによって、事件は大きく進展することになった。

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