第六十三章 幸福な時間

第六十三章

「幸福な時間」

  識字率が低い国に行くと、文字が読めるだけで重宝される。周囲からは知識人扱いを受ける。日本も昔はそういう時代もあったのだ。

  ここ「いなべ市」の中学生や高校生の学力は異常に低い。北勢中学校の四日市合格者数は100名以上の生徒数にもかかわらず去年も今年もわずかに1名。隣町の「桑名市」の陵成中学校や光陵中学校では毎年15名以上合格している。

  こんな環境で育つ中学生たちは、識字率が低い国で育つ文字の読める人のような扱いを受ける。ほんの少し勉強するだけで、勉強熱心。ほんの少し計算が出来るだけで頭が良いともてはやされる。当然、志は低く視野は狭くなるのだ。

  私はそういう生徒の指導が苦手だ。慢心しているので、少しひねった問題を扱おうとすると

「そんなの習ってない!」

  と取り組もうとしない。もちろん、桑高や川越に合格できるわけがない。指導していても、ちっとも楽しくない。私の「幸福の時間」は覇気のある、努力家の指導。最近、男子より女子の方に覇気のある子が多い。

  それで、理系女子の指導が一番楽しいことになる。私は小学生の頃は絵描きになりたかった。漫画家を夢みていた時期も長かった。美しいものを見るのが好き。外見ではない。美術とか数学の壮大な理論。

  逆に、素行不良、非行少年、非論理的な話などには生理的な嫌悪感。小さい頃からスルーすることにしている。だから、「ガリレオ」の湯川先生の犬のウンチの話や、彼が非論理的なこどもが嫌いでジンマシンが出るのには共感した。

  誰だって、ヤクザは避けるし犬のうんちは臭いから避けるだろう。

楕円c:x^2/a^2+y^2/b^2=1(a>b>0)上に2点P(0,-b),Q(acosθ,bsinθ)をとる。ただし、0<θ<π/2である。QにおけるCの接線をlとし、Pを通りlに平行な直線とCとの交点のうちPと異なるものをRとおく。このとき、
   θが0<θ<π/2の範囲を動くとき、三角形PQRの面積の最大値とそのときのQの座標を求めよ。

  いろいろやり方はあるだろうけど、普通に考えると接戦の方程式を出して、それと平行な直線の方程式を出して、楕円の方程式と連立させて交点の座標を求めて、底辺の長さと高さを求めて、三角形の面積を変数で表示し、微分して増減表を書いてみる。そんな感じだろうか。

  こういった理路整然とした論理は美しくないだろうか。美しく感じられるまでには、練習が必要だ。それは、料理の腕を磨かないと美味しいものが食べられないのと同じこと。医学の勉強をしないと、人の命を救えない。どんな分野でも、腕を磨かずに感動は得られない。

  幸福な時間は得られない。

 私が今までに受けた最低の授業は追突事故を起こして、三重県の自動車教習所の講習会を受けたときのこと。集まっていたのは、明らかに荒んだ生活をしているという雰囲気を振りまいている人たちばかり。教官は入ってくるなり

「途中で教室から出た人は、講習会を受けた印鑑を押しません」

 という脅しから始まった。

 次に酷かったのは名古屋の専門学校で非常勤講師をしている時のクラス。明らかにFランク大学でさえ入学を許可しないタイプのイカれた子たち。校長は、私たち非常勤講師に

「先生方は、あちこちの学校を掛け持ちされていますが、本校のことは口外無用で」

 と念を押していた。

 交通事故の常習犯や、Fランク大学も合格できないような子は社会ではカス、ゴミ扱いを受ける良い例だ。守るべき法令を守らない。守るべき校則も守れない。その結果、周囲に与える迷惑は時として人を殺してしまう。そういう人間には人間扱いする必要がないという暗黙の了解がある。

  警察や軍隊はそのためにある。こういう人といると「不幸な時間」になってしまう。関わらないのが一番だ。

  「幸福な時間」を増やし「不幸な時間」を減らす。それが、賢明な判断だろう。

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