都市部・地方都市・そして田舎で暮らした私が教える、田舎ライフの落とし穴8つ。

定年退職後に田舎で第2の人生を!とか
脱サラして田舎で農業はじめました!とか

地方新聞の紙面にはツアーを組むだのなんだの、よく企業や人の誘致の記事が載っている。


※リアルにこんな感じの線路です。


田舎にも都会にもそれぞれメリットはあるだろう。
しかし私はなぜわざわざ都会から田舎に来るのか、その理由がさっぱりわからない。都会で生まれ、田舎で育ち、現在そこそこ大きい地方都市で暮らすわたしが、今後田舎での暮らしを考えている人たちのために、リアルな田舎暮らしを書いていこうと思う。

田舎度合いによっては当てはまらない場合も多いので、目安として、どの程度の田舎であるかを下記に列挙しておく。田舎の中でも田舎と呼ばれる場所だ。地方の田舎をナメてはいけない。

【田舎度チェック】
・小学校は1クラス10人以下がデフォ、複式学級も存在する
・教室で鬼ごっことか余裕
・中学校は頑張って寄せ集めて2クラス
・学区内の人はだいたい知り合い
・家族構成はもちろん、親の勤め先まで把握している
・運動会は午前中で全プログラムが終了
・小学校まで徒歩45分、中学校まで自転車で45分(坂道なので1/3は歩く)
・最寄り駅は無人駅、自宅から車で20分
・車線ってなに?道はひとつじゃないの?
・ヤンキー怖い(でもいい奴多い)


こんなところだろうか。ちなみに数年前に小学校と中学校は廃校になった。
それでは田舎ライフの現実をご覧いただこう。


①田舎暮らしにお金がかからないは嘘
土地は安い。それは間違いない。ただ、田舎は車が無いと生活できない。駐車場代、ガソリンや保険などの車の維持費が余分にかかる。そして買い物するところがないので、近県に出向いて買い物することも多い。見たい映画がやっていない、行きたいライブは全部県外。

つまり、あちこちへの交通費がなかなかにかかってしまう。
田舎のイケてるショッピングモールは「イオン」であることを忘れてはいけない。
ついでにいうと田舎は給料安め。


②プライバシーとかない(物理的編)
私の地区は基本的に家に鍵をかけるという文化が無い。
さすがに夜はかけているが、快適な睡眠のため窓はあけっぴろげだったりする。昼は不在でも鍵が開いているので、近所の人は勝手に上がり込んでくる。
回覧板だの野菜が余ってるだの、いろんな理由で家を訪ねてくるのはいいのだが、不在の場合は勝手に玄関に置いていかれる。発見次第、提供者を断定しお礼だの次のアクションだのを起こさないと村八分。


③プライバシーとかない(精神的編)
田舎には娯楽がない。ゴシップが最大の娯楽だ。スーパーやホームセンターに行けば誰かしら知り合いが居るので、情報は筒抜けだ。

「○○さんとこの娘さん、XX高校に行くらしいわよ!」
「△△さんとこ離婚されたんですってね~」

知りたくもない噂ばかりである。おかげで当事者に会った時に若干気を遣う。
あと車で身元が割れるので、いわゆるレジャーホテル的な場所に行っていたことがバレたりもする。


アナログ情報網を侮ってはいけない。


④名前がわからない
田舎の人は名前ではなく屋号で人を呼び合う人が多かったりする、とくに高齢者。
親戚の名前が「中田」なのだが、ずっと屋号で「○○のおばさん」と呼んでいた。それを知ったのは中学生になってからだ。ややこしい。


⑤虫や動物、自然
虫が苦手な人は田舎に来るべきではない。寝ているときに首に違和感を感じ、手で触った瞬間激痛が走ったことがある。慌てて電気をつけたら、そこには大きめのムカデさんが居たということがある。
ちなみに深夜3時ごろの出来事だ。ムカデやゲジゲジを怖がっていたら生活できない。

秋はコオロギや鈴虫が大量発生する。風流があっていいと思うのも最初だけだ。うるさくて眠れやしない。ちなみに溜池など、水が近くにあるとカエルも大量に居る。夏場にウシガエルの声を聞きながら眠るのは、熱さの次に寝苦しさを感じる。蜘蛛の巣はできるし、カブトムシやクワガタは買うものではなく捕まえるものだ。

避雷針もないので、雷も普通に落ちる。
高い木に落ちたりするので、結構怖い、まじで。小学校のころピカッと木に稲妻が走り、その後凄まじい音と共に木がえぐれた瞬間を見たことがあり、それ以来雷恐怖症である。危ないんだから、田舎は。


⑥世間狭い
田舎で営業職をしていたこともあるワタクシ。いろんな人に会うわけで、世間話から営業トークを展開していくわけなのだが、通っていた学校とか言おうもんなら、すぐに共通の知人が出てくる。

営業職のくせにちょっとコミュ障な私ですら、自分の事顔広いを勘違いできるレベルで出てくる。
初対面の人が自分の黒歴史を知ってたりするんだからたまったものじゃない。おかげで距離が縮まり商談成立することも少なくないが、結構勘弁してほしい。


⑦なにもかも遠い
最寄駅からですら車が無いと自宅に帰ることができない。一度タクシーをつかったことがあるが4,000円くらいかかった。ちなみに初乗り460円。事前に呼んでおかないとタクシーなんていない。
なので移動手段はもっぱら自家用車。つまりお酒が飲めない。コスパを考えれば悪くないが、お酒を飲めないのは辛い。友達の家すら遠い、駅も遠い、学校も遠い、スーパーも遠い。そして病院や銀行、役所も遠い。田舎なので高齢の人も多いのだが、なにかあったとき救急車を待っていたらまじで死ぬと思う。なのでご近所付き合いが結構大事。命握られたりする。あと高齢者も車に乗る。長く同じ道を運転している人は割と自分勝手な運転をするので気を付けたほうがいい。


⑧仕事が無い

会社の支社や支店とかがあって移住するのならば問題ないのだが、こちらで職を探そうと思っても、正直ろくな仕事は無い。ハローワークはブラック求人もたくさんあるし、最低賃金も都会に比べると低いので、稼ぎたい人にはお勧めしない。仕事も華やかなものは少ないと考えたほうがいい。


ネガキャンだけしても仕方ないので、良いところもいくつか。


①自然、自然、自然。
田舎=自然というイメージで間違いない。私の家からは肉眼で北極星やオリオン座、カシオペア座なんかも見れたし、流れ星も珍しくない。山に囲まれていて空も近い。いつも遠くまで見渡せるので視力は良かった。雨上がりの土から立ち込める匂いは、アスファルトのそれとは全然違う。


②食費がかからない
土地が有り余っており、ある程度手を入れないと荒れてしまうので、わりとみんな農業をしている。それだけで食べている人は少ない。平日働きながら、土日などに畑を耕していたりするのだ。
実家に帰省した際に家族で鍋パをしたのだが、買い出しから帰り、いざ鍋を作ろうとするとネギと白菜がない。買い物リストに載っていなかったのだ。

「私からしたら肉より大事やねんで、それ。」

と抗議したところ、なんと畑から採ってきた。泥のついたネギとどでかい白菜。ものすごく青臭くて、小さいころは苦手だったのに、いつの間にか好きになるものだな、と自分の老化を実感した。

ただめちゃくちゃおいしい。スーパーで買うものとは全然違ってびっくりする。


泥のついた野菜を洗って川で冷やして食べたりもした。トトロかよ。


③やたらと親切(おせっかい)
小学校の帰り道、学校から家まで1時間近く歩いて帰るのだが、近所の人にバッタリ会うとそのまま車に乗せて家まで送ってくれる。今は時代が時代なので、さすがにそんなことはないと思うが。

帰りがけに野菜を持たせてくれたり(重いから嫌だったけどちゃんと御礼を言える子どもだった)、まぁとにかく皆とても親切だ。自分と同じコミュニティに属している人に対しては、だが。
外からきて馴染むまでの間は、排他的な空気に耐える忍耐力を身に着けておくことを推奨する。


と、まぁこんなところだろうか。


田舎に越してきたのは幼稚園の頃で、その当時は家の周りはアスレチック!という感じでただただはしゃいでいた。中学生、高校生になる頃にはもうアスレチックに興味をなくし、狭いコミュニティを窮屈だな、と感じることが多くなったのだが。


田舎はコミュニティが強い。
都会はわりと個人主義というか、警戒心も強いし見て見ぬふりも多い。
それが心地よい人には田舎は向いていないと思う。


でもまぁ、悪くは無い、不便ではあるけれど。


物理的には余裕しかないし、体を思い切り伸ばすことができる環境というのは、結構必要だったりする。農作業をしていると身体も健康だし、実際田舎の高齢者は非常に元気だ。


今は地方都市に住んでいて、大きな駅周辺でも少し歩けば手ごろな家賃のマンションがあって、買い物に不便もなくて、映画館やライブ会場も電車でちょっとのところにあって、辟易するほど人も多くないし、私としては非常に住みよい街だなと思う。

ただ、子どものころ初めて田舎に来た時の、あのワクワク感はもう一度味わいたいし、
採れたて野菜の美味しさも、なかなか忘れがたいものである。


大人になると新しい環境に馴染むことは中々に骨が折れることだ。とくに都会と田舎では常識が違う、文化が違う。外国だと思っていたほうがいい。方言はときに難解すぎて通じないこともある。


セカンドライフを検討中の方は、田舎への理想や幻想はほどほどに、しっかり現実を見て引っ越すことをオススメする。

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