お母さんとJKと、汗かき男

電車に乗っていて、汗が滝のように溢れ出ることが起こった。


僕は、ドアのところに立っていたんだけども、反対側には、赤ちゃんを抱っこしたお母さんがいて、その隣では女子高生が参考書らしきものを読みながら立っていた。


お母さんに抱かれた赤ちゃんは、その可愛らしい手でおもちゃを持っていて、ぶらぶらさせているもんだから、いつ落ちるのか心配で心配で、もうこの時点で汗がジワリと出ちゃってた。


そしたら、案の定、ぽとり。


赤ちゃんの手から落ちたおもちゃは、お勉強中の女子高生の足下に。


僕は、その女子高生がきっと拾うだろうと思っていた。


そしたら、なんとその女子高生はシカトをかましやがった。


拾わないのかーーーい!?


勉強に集中するのもいいけどさぁ、それはさすがに気づくじゃろ!?


その、僕のなかで巻き起こった一瞬の戸惑いが、全ての失敗だった。


僕は、落ちたおもちゃを拾おうと一歩踏み出し、手を伸ばした。


すると、お母さんが赤ちゃんを抱えたままあっさり拾っちゃった。


僕とそのお母さんが全く同じタイミングで動いちゃったもんだから、二人して「すいません」と言い合ってしまった。


もう恥ずかしくて恥ずかしくて、汗が滝のように溢れ出ちゃった。


はい、ここからは、赤ちゃんの手からおもちゃが落ちた瞬間から、僕とお母さんの両者視点でお楽しみください。


〜おもちゃが女子高生の足下に落ちる〜


僕 (あ、やっぱり落ちちゃった。)


お母さん (あ〜ぁ、落としちゃった。)


僕 (JK、拾うよね?)


お母さん (彼女、拾ってくれないかしら?)


女子高生 (……私、勉強中なんで)


僕 (拾わないのかーーーい!?)


お母さん (ま、仕方ないよね。勉強で忙しいみたいだし)


僕 (拾ってあげなきゃ…)


お母さん (拾わないと…)


二人「(よいしょ…あ)すいません」


というわけで、僕は直ぐさま、もとの場所に戻った。


気まずい。実に、気まずい。


早く駅に着いてくれと心の中で願いながら、女子高生の顔を覗いてみた。


……なっ!!なんだその澄まし顔は!?


わたし勉強してるんで、じゃなかろうが!!


試験勉強だか受験勉強だか知らんが、そんなお前は赤点がお似合いじゃ!!不合格お似合いじゃ!!


おかげで喉がカラカラだわ!!俺がかいた汗の水分を返せ!!


電車を降りるとき、いろんな人の視線がこちらを向いていた。


嗚呼、お恥ずかしい。


家に着いてシャワーを浴びて、汗を流してスッキリした僕は、裸のままベランダに出て洗濯物を干しました。


これから、サイモン・ペッグ師匠の「変態小説家」を見ます。


わーい、楽しみだなぁ。

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