劣化万歳

僕は「劣化」という言葉を使うのが、どうも好きになれない。


昔と今を見比べて、


「うわぁー、だいぶ劣化しとんなぁー」


って言うあの感じ、好かん。


「劣化」って言葉は、どうも悪役にしか思えない。


この“ヒール(悪玉)”を打ち負かせられる言葉はないものかしら。


劣化したっていいじゃない。


よし、想像する。


まだ化粧すら知らない女子高生(サッカー部のマネージャー)だった彼女、あれから20年が経った今、小さな子どもと手をつないでいる姿を、故郷の駅舎で見かけた。


あの頃より少し体型も変わっていて、お尻と胸、お腹の弛みが服の上からでも分かった。


自分の時間なんて限られている主婦業の1日を、頭の中で思い巡らす。


きっと他人が思っている以上に大変な職業だと思う。


高校時代、サッカーの練習が終わる夕暮れ時、下校の道中、いっしょに帰っていた彼女とどんな話をしていたのか、全く思い出せない。


それでも、あの時の二人の間にある距離感や、彼女の表情、空の色、まわりの暑さ寒さや音は、はっきりと覚えている。


あれから時が経ち、年を重ねた彼女を見ても、この胸は高まる。


僕は勇気を振り絞って…


ああーいかん!!!それ以上は!!!


というわけで、年を重ねることに魅力を感じている今日この頃です。


劣化万歳。

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