変えられる進路と変え難い進路 その3

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著者: Tachibana Toshiyuki

大学を卒業したものの即戦力になれる訳でない。会社で必要な知識は大学で学んだものとは違った。

政治学は残念ながら出番が無かった。

むしろ必要なのは電卓で「四則演算」が速く出来ること、経理の勘定科目が分かること。

前者は実務を経て速度を上げるしか無い。

後者は簿記専門学校に行った妹の教科書とワークブックを借りて勉強。

配属は経理部では無く企画部。予算や中期経営計画を作成したり、実績を予算との対比で分析したりする仕事。

途中2年間自ら希望して営業に出たが、また戻って来て通算8年間企画部にはいた。


その後は財務部に移って資金調達や支払い処理、為替予約や金利スワップで8年間。

最後は財務課長にもなった。

銀行の営業や審査部の連中と仕事をすることになり、自分の金融関係に関する知識の無さを実感。

「証券アナリスト」の資格を取りたかったが、当時は銀行や証券会社に勤務していないと取得が出来なかった。(今は変更があって可能。実際、一次、二次と合格、晴れて日本語証券アナリスト協会認定アナリストに)

丁度出来たばかりの社会人夜間大学院の走りを受験した。

その頃、銀行や商社は挙って中堅社員を欧米のビジネススクールに派遣。

うちの担当者もMBAが多かった。

(でも海外となると仕事も辞めて行かなければならないし、お金も掛かる。

英語も日常会話なら何とかなるが授業となると、、、)

そんな時に新聞で紹介されていたのがこれ。国立大学院で学費も安い。

場所も都内中央。

募集要領を入手して見ると、「数理科学」と「計算機科学」と「経営学」の融合を目指したMBAコース。

選考は大学の成績書、研究計画書、小論文、口頭試問。

小論文試験に行ったときのこと、やおら一人の男性が立ち上がりこう言った。

「皆さん。競争倍率は10倍ですから、このクラスにいる人で合格するのは3ー4人です。

今年は無理でも来年に向けて勉強会をやりましょう。

興味のある方はこの名刺を持って行って連絡下さい。」

(凄い人がいるな)と内心思ったが、一方で倍率10倍で「皆んな」で受かるなんて無理なんじゃ無い、とも思った。

何でか知らないが不思議な事に一発合格。

後日、教授に聞くと「研究計画書」が良くできていて、もっと言うとその通りに研究を進めれば修士論文の完成は間違いないだろうという点が評価されたそうだ。

また高校が理系であったり、大学時代に経済数学を経済学科でも無いのに取っていたのもプラスだった様だ。教授陣の三分の二は理系出身だったと思う。

在学の2年間は本当に寝る時間を削ってべんきょうをした。

そして晴れて日本のではあるがMBAホルダーになり、政治学から経営学、会計学、統計学を駆使して勝負する仕事に随時ついていく事になる。


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