フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第8話

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更衣室を出ると

蛍光灯の照明が落とされ、いつものけたたましいBGMが流れていた。

ふとVIP席を見るとボックス席に玲子さんが座ってタバコを吸っていた。

隣にはグレイのスーツに派手な色のネクタイをしたちょび髭男が座ってた。


「あ、オーナーだ」


後ろを歩いていたミホが言った。


「オーナー?」


私はもう一度彼らの方を見た。

玲子さんが私に視線を止めて、ニコッと笑った。

オーナーというちょび髭男もつられるように私を見た。

私は軽く頭を下げた。


「今日のショー楽しみにしてるから」


玲子さんは黒いチャイナドレスを妖艶に着こなしていた。

笑った時、結構深く目尻のシワが刻まれていた。


一体この人はいくつなんだろう。



「オーナーの女だよ。玲子さんは」

ミホが待機席に座るなり言った。


「え?」


「もう10年ぐらいの付き合いらしいよ」


「でも、玲子さんは佐々木マネージャーと付き合ってるんじゃないの」


「ああ、アキさん?あの人は女と見りゃ

  誰彼構わずだかンね」


奥の席から歩いてくる佐々木の姿が見えた。

ナンバーワンのミサキと一緒だ。

モデル体型のミサキと大柄な佐々木はシルエットだけ見るとお似合いだった。

佐々木は何やらご機嫌取りをしているようだった。

「ミサキ、そんなこと言わないでさあ、頼むぜ〜」

通り過ぎる時そんな声がした。


「でもお、ここだけの話ね。玲子さんの方が佐々木マネに

  ゾッコンらしいよ。どこまでの関係だか分かんないけど

   オーナーが知ったらヤバイだろうね」


ミホは携帯電話をいじりながら、さほど興味なさそうに言った。


ゾッコン?あの野蛮そうな佐々木に?

玲子さん、綺麗なのに悪趣味だな。




いよいよショーまでの時間が迫ってきた。


私はスパンコールだらけのやたらキラキラした衣装に着替えていた。

他の女の子達は気だるそうにショーが始まるのを待っている。



心臓の鼓動が徐々に早まる。

私の出番など20分のショーのうちわずか冒頭の3分足らずだ。

でも、それでもあの狭いステージの上でスポットライトに照らされ

客の視線にさらされることには変わりないのだ。


私は6人くらいのダンサーと共にステージ中央でスタンバイした。


暗闇の中で私はふいに不安でいっぱいになった。

それは緊張からくるものではない。

それはとてつもない大きな後悔にも似ていた。


今夜ここでステージに立ってしまうことで

取り返しのつかない 何かが壊れてしまう気がしたのだ。


私はこの1ヶ月、サイズに合わない靴を無理して履いている気分だった。

でもその感覚にどこか安心している自分がいた。

ブレーキを踏み続けている自分に。


でも…


やがてオープニングのBGMが流れてきた。



でも…


もうきっとブレーキが効かなくなる。


それは確信にも似ていた。




そして幕が上がる…









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