友達が自殺未遂しました、たかが婚活で。〜後編〜

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奈々子は、早速自分の好きな場所を彼に教えた。



私の好きな場所は、花や緑の多い所。

海の見える公園、静かな図書館

そしてあなたと同じ小さなカフェも落ち着くし好きです…





奈々子は夢中でパソコンに向かっていたが

いつの間にかそのままコタツでうたた寝していた。








2回目の相談所の更新の日が来た。


やっと前回のローンが終わったというのに。

また月々2万円払い続けるのか…


おまけに明後日で奈々子は34歳だ。



これで、また申込みもぐっと減るだろう。

奈々子はイライラしながら電車に揺られていた。


席が空いたので腰を下ろした。

昨夜、寝付けなくていつもより多めの睡眠薬を飲んだせいか

朝から眠気が続いていた。


あ、そういえば、安定剤を飲み忘れて出てしまった。



奈々子は外の景色を見た。

まだあと、20分くらいある。

ちょっとだけ寝てようかな。


その時電車が止まり


ベビーカーを押す若い母親が乗って来た。


明らかに奈々子より年下だろう。

まだ1歳くらいの赤ちゃんは服の色からして男の子だろう。

小さな手足をバタバタさせて、ニコニコしている。


彼らは奈々子の隣の席に座った。


昔の奈々子なら周りの乗客同様、微笑ましく見ていただろう。

でも奈々子は、眉間にしわを寄せ目を背けた。


「ターちゃん、これで遊ぼうね」と声をかけ

母親が赤ちゃんをおもちゃであやしている。



ベビーカーを押す母親になど

いつだって簡単になれると思ってた。


なのに今、奈々子には彼女が雲の上の住人にさえ見えた。



なんでこんなに卑屈にならなきゃならないの?


イライラと不安で眠れそうにない。



その時、赤ん坊がキャーーっと泣いた。


遠くの席の人まで振り向くような声だ。


その瞬間、奈々子は母親に鋭い目を向けた。


「ちょっと、迷惑なのでどうにかしてもらえませんか⁉︎」


母親は「すみません」と言い泣きそうな顔になって

次の駅でそそくさと降りた。




その次の瞬間

奈々子は、大きな後悔と罪悪感で胸が潰れそうになった。




私は…いつからこんな…心の醜い人間になったんだろう。






2度目の更新は、女社長は不在だった。


どうせ更新するだろうと軽く扱われているのか

それとも、もう見込みがないお荷物会員だとでも

思われているのだろうか。


「どうします?更新しますか?」


表情1つ変えず、事務的に話すカウンセラーの話し方

100人以上いる会員から搾り取ったであろうお金で

贅沢に彩られたサロン…全てが腹立たしかった。


「この男性なんかどうです?あなたの場合

  申し込みがないわけじゃないんだから

  もっと積極的に…」


これで手を打ったら?と言わんばかりに

冴えない男性のプロフィールを出された時


奈々子の中でプツっと音がした。


そして壊れた。


奈々子は、そばにあったボールペンを

男性のプロフィールの紙に激しく

何度も何度も、突き立て続けた。


「こんなもの!こんなもの!」

と叫びながら…



やめてくださいと、止めに入ったカウンセラーを

刺さなかったのがせめてもの救いだった。


別のカウンセラーが慌てて入って来て

「除名処分にしますよ!」

という声に奈々子は我に返った。


奈々子は震えながらその場で泣き崩れた。


「除名にしないでください!お願いします…」

と言いながら…





奈々子の婚活の本当の悲劇は

まだ続きます。


でも、運は彼女を完全に見捨ててはいませんでした。


それは次回の完結編でお話しします。




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