青島ビール
お酒は楽しく程々に。
なんていうけれど、程々になんてそんな簡単にできるわけない。
一度お酒を飲みだすと、みんなべろんべろんに酔っぱらって意味わからないことをしだす。
笑ったり、泣いたり、脱いだり、吐いたり。
みっともない。
だから私は飲み会が嫌いだ。絶対に出席しない。これが私のポリシーである。
「家に青島ビールがあるんだけど一緒に飲まない?」
普段の自分ならNOだ。迷いなんてない。お酒は害だから。
でも。このときはちょっと違った。
彼と私はサークルの友人。特別仲が良いわけでもないし、かといって悪いわけでもない。
実際かっこよくもないし、普通な人。田舎から上京してきたちょっとださめの男子。The 平均値男。
第二外国語で中国語を学んでいる彼が突然飲み会を誘ってきた。
‐青島ビール‐
いかにも中国語学んでいる、という感じだ。なんだろう、このどうしようもない感情は。
なぜそのセレクトなのか、もっと今時らしいというか、日本の大学生らしいというか、そういう普通のセレクトはできないものなのか。
「愛くるしい」
この言葉がしっくりくるのかもしれない。
「大勢で俺んちで飲み会しようよ」
「私飲み会好きじゃない」
「でもきっと美味しいと思うけど...」
「...」
「たくさん買いすぎちゃったんだよね、はは、飲まない?」
「...考えとく。」
いつもの私なら「考えとく」なんて曖昧な返事はしない。
適当に用事でもつくって意地でも行かない。
なぜ、考えとくなんて言う中途半端な返事をしたのだろう。
何に惹かれたのかな、萌葱色の透明の瓶が私を初めての飲み会に誘っている。
行くかどうか、返事はまだしていない。
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