第1章 ありのままの自分
俺は余りに悲惨な光景から現実逃避するために、瞼を閉じた。
ほんの数秒間が経過しただろうか、ゆっくりと躯が揺れた。
そして、その間の記憶がなくなり、ふと我に返った。
そう昇華したのだ。身に起こった現実はそれを物語った。
瞼を開くと、そこはいつもと変わらない駅舎、いつもと同じ時刻に下車する自分がいた。
しかし、俺の闇にはもう一人の自分が宿ったのかもしれないのだ。
そして、おそらく夢でも見たのだろう。数秒前の凄惨なる光景は
跡形もなく消えていた。そう昇華したのだ。
沃素やドライアイスが気化するが如く。
社会から抹殺された、もう一人の自分がまるで宿主を借りるかのように。
そして、数年後。~今はそんな事故さえも憶えていない。
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