ロリポップ!の成長
坊主さんと、ちょっと年上のアルバイトのお姉さん、坊主さんの同僚でオシャレなサイトを作っているモチナガさん、そしてボク。この4人でpaperboy&co.という会社は、福岡の中でもおしゃれな街と言われている大名にあるビルの中でスタートした。
「ロリポップ!レンタルサーバー」という2ちゃんねらーに叩かれているけど、人気が出始めているサービスの運営と、そのほかにもいろいろやっていこうという目的の会社だ。その当時事業概要にはこのように書いてあった「サーバーホスティング」「ウェブデザイン」「ウェブコンテンツ」。ボクたちは福岡でイケてる制作会社としてやっていく予定だったのだ。
そんな始まったばかりの会社の一日目。坊主さんはAIBOを買ってきた。その当時話題となっていたロボットだ。3世代目のAIBOはコロコロとしたかわいらしいロボットで、声も仕草もぬいぐるみのようだった。ちなみに、名前こそ付かなかったものの、そのロボットはしばらくの間ペットとしてスタッフに可愛がられた後、いつしか誰も気にとめることがなくなり、3ヶ月後には彼はいないものとなっていた。
狭い部屋だったがAIBOが気ままに歩いていたり、お騒がせ前のt.A.T.u.のCDをかけたり、2ちゃんねるで話題になっているスレについて会話したり、ゆるいながらも職場としての空間ができてきた。もともと受託開発の会社で働いていたモチナガさんは掲示板や日記のCGIがレンタルできるサイトの開発、アルバイトのお姉さんはお客様への利用料請求や通帳の記帳、そして社長である坊主さんはお客様からの申込みをもとにサーバーのセッティングや運用業務を主にやっていた。
一方、ボクは「お客様担当」という肩書きが与えられた。お客様担当として最初にやった仕事は、貯まっているお問合せのメール3000件を全て返信すること。坊主さんがルーズなのは知っていたけど、ここまでルーズだとは・・・・・。そんなことを思いながらも、ちゃんとしないと気が済まない性分もあって、メールを1件1件夢中で返信した。一番多かった問い合わせは「いつになったら回答頂けますか?」というものだった。リアクションがないとお客様は不安になる。このことはお客様の対応をしていく中で大きく気づいたことで、サポートで重要なのはレスポンスの早さであることを学ぶことができた。
ある日、疑問に思い記帳された通帳の束をみせてもらった。よく見ると、振り込まれたものに対して、請求の消し込みしていないことに気がついた。入金されたことを確認していないのはもちろんだが、未回収を管理していないことでもある。要は払わなくても使えたという事だ。問い合わせが増えてしまうことに危機感を感じたボクはマイクロソフトのAccessで作られた顧客データベースにある契約情報と銀行の通帳を見て、消し込みをするという途方に暮れる作業もやっていった。人手が足りなかったので、求人雑誌で募集をかけ20人ほど面接をした中から、女性を一人入金管理担当として採用した。
ボクたちのやっているレンタルサーバーというのは、ウェブサイトを公開するために必要となるインターネットに繋がったファイル置き場を提供するものであるが、アクセスが集中したり、プログラムが暴走したりすると、サーバーが重くなったり反応しなくなったりする。そのような時には原因を突き止め対処しなければならない。ただ、インターネットは不眠不休であるため、四六時中目が離せない。お客様の数が増えると必然的にサーバーの台数も増えてしまうので、そうなると坊主さん一人で対応することができなくなる。そこでリクナビを利用して二人のサーバーエンジニアが入社してくれた。一人は経験者のモーヲタ、もう一人はほぼ未経験だけど何でもやりますと言って入ってきた23歳。人手が増えた事により坊主さんも開発業務に集中する体制が整っていった。
「問い合わせしても返信がない」「入金してないのにずっと使える」「申し込んだのにいつまでたっても使えない」「いつまでたってもパスワード変更ができない」そいうった2ちゃんねるでの書き込みやクレームのメールも次第に減っていった。
そんな会社としてちゃんとする一方で、レンタルサーバー業界に革命を起こす準備が着々と進んでいた。
坊主さんとモチナガさんが進めていた、サーバーの自動セットアッププログラムと新しいサイトデザイン、そして複数あった料金プランをひとつにするかわりに容量をアップさせた新しいロリポップ!だ。
この頃には坊主さんを社長と呼ぶようにしていたが、社長には人がやろうとしなかった事をやってしまえるバイタリティを持っていた。そしてそれをデザイン、プログラムの両面から実現することができるクリエイターであるモチナガさん。
そんな二人が手がけた、ロリポップ!のリニューアルは大成功を収めた。今まで毎日10件ほどだった申込みは100件に跳ね上がった。その後、ブログブームが追い風となり、毎日300件以上の申込みとなる国内最大のレンタルーサーバーとなっていったのである。
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