カルトに負けない人間性

エホバの証人の世界はある意味、強制収容所のようだった。そんな中でも強い人間性を発揮する者たちもいた。

以下は、ナチスドイツでのある音楽隊メンバーの体験談である。絶望に負けない人間性について考えさせられる。

「101歳が回想する、ユダヤ人収容所での音楽隊の仕事―。絶望の中でも手を差し伸べる人間は必ずいる」

 ヘレナが他の囚人よりも好待遇を得られたのは、彼女が音楽家だったからである。ビルケナウでは強制労働に赴く囚人の意欲を高揚させるため、音楽隊が結成されていた。ヘレナはバイオリニストとして入隊し、重労働を免除されたばかりか、防寒や医療などでも恵まれた環境に身を置くことができたのである。

 もちろん、音楽隊の毎日が幸福だったわけではない。朝から晩まで訓練は続くし、指揮者のアルマ・ロゼはどこまでも厳しい女性だった。アルマは有名なバイオリニストだったが、ユダヤ人だったために収容された囚人である。アルマは「音楽隊は楽をしている」と思われることが自分たちにとって不利に働くと知っていた。そのため、隊員に対して優しく振る舞うことは滅多になかった。しかし、アルマの毅然とした態度があったからこそ、ヘレナたちはナチスから保護され続けたのである。アルマの人間性はナチスすらも一目置いていたという。通常、ナチスは囚人を番号でしか呼ばない。しかし、アルマだけは名前で話しかけられていたのだ。

 囚人たちが強制労働を命じられ、ときには処刑されている側で演奏をし続けることに、ヘレナは葛藤する。隊員の中にはうつ病を患った者もいた。それでも、ビルケナウ全体の生存率を考えた際に、音楽隊が生き残った割合が驚異的なのは事実である。ヘレナはこう考える。

「あのような非人間的な状況にあっても、過酷な運命に打ち克つように、あるいは辛い体験を少しでも和らげるようにと他の人たちに手を差し伸べた人間がいた

 アルマたちリーダーの強さや隊員同士の友情は、絶望に負けない人間性を読者に教えてくれるだろう。」

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