独立系?ユニオン、組合との遭遇 その6
ユニオンと組合員の内輪揉めという思いがけない展開に。こちらからすると思ってもいなかった好機。
心の中では、(もっと揉めろ〜)と思っていたが、そこは百戦錬磨のユニオン幹部。
どう言いくるめたかは分からないが体制を立て直して帰ってきた。
(きっと取り分を値切られたんだろう。ご苦労なこった。)
ここで逃すのも癪なので飄々と聞いてみた。
「取り分をそんなに取って良い商売ですよね?」
激怒するかと思っていたが意外にもぼそっと、
「ユニオンも色々と物入りだからな。
組合員を動員するにしても、ビラを印刷して撒くにしても。」
確かに良く見てみると二人ともパッとしない定年退職者が公園でぶらついている時に来ている様な服を着ている。
売れない作家が時計を見ながら、
「そんな事より今日は第一回の団交としてこちらからの要求の説明が主目的。
もう二時間近く経ったから今日はこの位にしよう。ところで回答はいつ頃貰えそうなの?」
さっきから一言も発せずに俯いていた谷啓がユックリと頭を上げる。
(あっ、こいつ寝てたな)
「まだこの場所は使えますから。事実関係をもう少しはっきりさせましょうよ。」と、人事部長。
困った様な表情で売れない作家が、「意見があるなら紙で頂戴よ。」と言葉を繋ぐ。
「いや、もう少し話しましょう。」再度、人事部長。
「こっちだって色々と忙しんだよ。」
「この後、何か予定が入っているのですか?」
「そう、野暮用。そう熱くなるなよ。」
(こちらは至って冷静だけれども・・・。)
「それと次回の団交の予定だけど二週間後の同じ時間でどうだい。」
「場所の確保も有るので回答と一緒に連絡します。」
「そうかい。頼むよ。
こっちはちょっと内輪の話も有るので、じゃあこれで。」
そう言ってユニオン側は退出した。
気になったのはかのマネージャーが終始勝ち誇ったかの様に此方を見ていた事。
あのすぐ感情的になる人間が「取り分」の話になった時以外は就職沈黙を守っていた事が、却って不気味だった。
しかし、人間の性格はそう簡単に変えられない事は次回の団交の席で直ぐに明らかになった。
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